第153章 このバカ、あなたは私を利用したいだけ

初陽はその場に立ち、星野寒が食卓に歩み寄り、朝食を一つ一つテーブルに並べるのを見つめていた。

こういった些細な日常の光景は、前世でも彼女は数多く目にしてきた。

寒が家に帰るたびに、彼はスーツの上着を脱ぎ、袖をまくり、エプロンを身につけ、彼女のために手料理を作ってくれたものだ。

もし彼が時折見せるわずかな温もりがなければ、あの頃の初陽は、どうして冷たい豪邸で静かに年月を重ね、彼を待ち続けることができただろうか?

星野寒、彼にはある種の魔力があった。常に彼女に、この男は自分を愛しているのだと感じさせる力が。

前世の残酷な教訓により、初陽は今世では常に冷静さを保っていた。

もう寒を簡単に信じることはなく、彼の時折の気遣いや思いやりに心を動かされることもない。

「おいで、熱いうちに早く食べて...」寒は上着を脱ぎ、椅子に掛け、ゆったりと腰を下ろし、ぼんやりしている初陽を見上げて、低い声で呼びかけた。

初陽は突然我に返り、「洗面してくる」と一言残すと、すぐに寒の視界から消えた。

10分後、初陽は身支度を整え、空色のニットのミディアム丈セーターに着替え、下には白いスキニーパンツを合わせ、足元には同系色のショートブーツを履いていた。

そのさわやかで美しい装いは、リビングに足を踏み入れた瞬間、すべて寒の瞳に映り込んだ。

寒は初陽を見つめ、数秒間呆然とし、瞳の奥に煌めく光を宿した。

以前、初陽がこのようなスタイルの服装をしているのを見たことがなかった。この瞬間、彼は心を奪われていた。

「とても綺麗だ...」口の中の唾液が喉で転がり、彼は拳を口元に当て、わざと二度咳払いをし、かすれた声で、淡々とその三文字を吐き出した。

初陽は口をとがらせ、「綺麗だからって、あなたに見せるためじゃないわ」とつぶやいた。

その後、初陽は黙々と朝食を食べ、一方の寒は動かず、美しい瞳で初陽をじっと見つめ、視線を一瞬も離さなかった。

20分後、初陽は牛乳を一杯飲み終え、顔を上げて寒を見つめ、小声で尋ねた。「で、何の話があるの...」

寒の瞳は初陽の艶やかな唇に注がれ、瞳の奥の輝きが思わず深まった。

手を上げ、親指が初陽の唇の端に触れた。