第32章 もう遊んであげない

初陽は小声で笑い、瞳の奥に冷たい光が走った。

「ふふ……村田城弟くん、もしかして私を嫌がって、女伴にしたくないのかしら?」

村田城は体を震わせ、心臓がドキドキした。彼女の笑い声がなぜこんなに不気味に聞こえるのだろう。

お嬢様よ、笑わない方がまだましだ。この笑いはもっと怖い、鳥肌が立つほどだ。

「そんなことありませんよ、むしろ願ってもないことです」

「じゃあ、入りましょうか……城弟くん?」初陽は唇を曲げてまた笑った。その笑顔は穏やかでありながら、魅惑的な色気を帯びていた。

村田城の視線がようやくゆっくりと彼女に注がれ、瞳の奥に驚きの光が走った。

ミルキーホワイトのイブニングドレスを纏い、背中が大きく開いていて、玉のように白い肌が露わになっていた。

長い髪が肩に垂れ、背中の美しさの半分を隠しているが、歩くたびにちらちらと見え隠れし、優雅さと官能的な魅力を放っていた。

薄化粧の顔立ち、小さな顔、その美しさは言葉では表現できないほどだった。

特にあの輝く瞳は、どんな男性の魂も簡単に奪いそうだった。

「城弟くん、何を見てるの?」初陽は彼が少しぼんやりしているのに気づき、小声で尋ねた。

「ごほん、いや、何も……」彼は手の甲を唇に当て、わざとらしく咳払いをして、先ほどの一瞬の眩惑と動揺を隠そうとした。

この女性は、美しい毒蛇のようだ。遠くから眺めるだけで、近づいてはいけない。

一度関わったら、死よりも恐ろしいことになる。

急いで思考を整理し、彼は軽く微笑んだ。

「姉さん、じゃあ入りましょうか……」

「ええ……」初陽はまた笑顔で答えた。

会場に入ると、初陽の口元の笑みはゆっくりと消えていった。

村田城の腕から手を離し、冷たい声で言った。「お姉さんは用事があるから、もう付き合えないわ……」

村田城は驚いた。あまりにも落差が大きく、全く反応できなかった。

さっきまで温かい笑顔を見せていた美女が、今は冷たい表情になり、話し声まで氷のように冷たくなっていた。

「姉さん、どうぞ用事を済ませてください。私は……邪魔しませんから」村田城は硬い笑顔を作り、震える声で答えた。

初陽は周囲を軽く見回し、会場を行き交う人々を観察した。

軽く頷くと、彼女はもう一言も言わず、歩き出した。