第82章 用もないなら出歩かないで

一瞬、心の中で言いようのない憂鬱さを感じ、彼は雪の中に頭から飛び込んで姿を隠したいほどだった。

「初陽……」秋山伊人の瞳が揺らめき、目には輝く涙が光っていた。彼女は初陽の名を呼んだが、言いかけて止めた。

初陽は悔しそうに自分の頭を叩き、心の中で自分を呪った。

「あぁ、私ったら何て口の利き方をしてるんだろう。伊人、怒らないでね、私もあなたを心配してるからつい言葉を選ばなかっただけよ。決して怒らないで、体を壊しちゃうわ。重病を抱えている人は、気持ちが塞ぐのが一番よくないの。気にしないで、心を広く持って……」

伊人の顔色はさらに青ざめ、初陽を見つめていた。彼女は笑顔を浮かべていたが、その笑みは目元まで届かず、むしろ冷たさを帯びていた。

一言一句、すべての言葉が皮肉に満ちていた。

かつての葉田初陽は、こんな人ではなかった。

今の初陽を前にして、彼女は不安げにその場に立ち尽くし、どうしていいかわからないようだった。

「初陽、あなた変わったわね……」彼女は恐る恐る初陽を見て、小さな声で言った。

初陽は冷笑した。もちろん変わった、変わらなければ、この世でまたあなたに心臓を譲るとでも?

前世では、彼女は秋山伊人がどんな女性なのか理解していなかった。

今世では、彼女は理解したくもなかった。ただ知っているのは、前世も今世も、彼女の悲惨な運命はすべてこの女のせいだということだけだった。

「ええ、人は誰でも変わるものよ。変わらなければ、ずっと……ずっと生きていけないもの」初陽は頷き、淡く微笑みながら言った。

一言一言、彼女が話すたびに、顔の笑みはより輝き、言葉遣いは優雅で落ち着いており、卑屈でも傲慢でもなかった。

「伊人は体が弱いんだから、用もないのに外に出歩かない方がいいわ。長年の友人として、健康で長生きすることを心から祈ってるわ……また……会いましょう……」彼女は眉を上げ、身を乗り出して伊人をしっかりと抱きしめ、小声で言った。

伊人の顔は真っ青になり、完全に血の気が失せていた。

体は言いようもなく震え、桜華の顔には言葉にできないほどの哀れさが浮かんでいた。

傍らにいた村田城は、密かに舌打ちした。この女は本当に容赦がない、一言一言が伊人の痛いところを突いている。

伊人が最も忌み嫌うのは、「健康」という言葉だった。