橋本奈子は怒りで体中が震え、頬はさらに青ざめ、胸に詰まった息が上にも下にも行かなかった。
「私は……彼女は……」
アシスタントは焦って、急いで橋本奈子の呼吸を整えようとした。
初陽はそれを冷ややかに見つめ、隣で石川桐人が頻繁に送る色目を無視しながら、軽く唇を曲げて前に進み、橋本奈子の腕を支えた。
「申し訳ありませんでした、橋本先生。さっき私はひらめいて、もし私があなたを水に突き落とし、沢田湊人に誤解させるという展開なら、観客が沢田蛍への憎しみをより感じ、速水静により多くの同情と好感を持つだろうと思ったんです。沢田蛍が悪ければ悪いほど、観客は感情移入しやすくなります。元の脚本も悪くはなかったですが、感情移入が弱すぎて、この方がより直接的でインパクトがあると思って……」
石川は唇を引き締め、眉を緩めて初陽を見つめていた。
暖かな陽光が彼女の艶やかな黒髪に降り注ぎ、微かな黄色い光の輪を作り出していた。その美しさには、見通せないような朦朧とした雰囲気があり、霧のようでもあり、雲のようでもあった。
そこには一種の淡々とした冷たさと距離感があり、特に話すときには、言い表せないような冷たさと鋭さを感じさせた。
美女は数多く見てきた。優しい女性も、セクシーな女性も、クールな女性も。
しかし、葉田初陽はあらゆる性格を兼ね備えていた。彼女は優しく親しみやすくもあり、セクシーでもあり、さらにはクールな美しさも表現できた。
彼女の澄んだ瞳と白い歯の美しい顔立ち、そしてかすかな微笑みを見ていると、なぜか彼は見入ってしまった。
雪村監督はうなずき、初陽の説明に非常に同意して、さらに諭すように言った。
「突然のことだったが、初陽はひらめいたんだ。このようなインスピレーションは早い方がいいからね。だから彼女が突然そういう決断をしても、特に過ちはない。奈子、もう気にしないでくれ……」
橋本奈子は怒りで長い間言葉が出なかった。葉田初陽が彼女にあんな酷いことをしたのだから、監督のところに駆け込んで告げ口すれば、監督は初陽が勝手に脚本を変えたことを叱るだろうと思っていた。しかし、すべてが彼女の予想とは正反対だった。
彼女は怒りに震え、蒼白な顔が一瞬黒くなったり白くなったりし、大きく息を吐きながら、長い間一言も発することができなかった。