第184章 この世に神仏はない

星野寒と長年付き合いのある沢田鶴は当然知っていた。星野寒の周りの黒服のボディーガードたちは、特殊訓練を受け、丹精込めて育てられた強靭なエリートであり、一人一人が百里選りすぐりの腕利きだということを。

身のこなしにしても、射撃の腕前にしても、自分の部下たちは彼らの相手ではない。

これらの者たちが死を賭して抵抗すれば、沢田鶴は自分がここから一歩も逃げられないことを承知していた。

彼は長考した末、広田崇のこめかみに押し当てていた短銃をゆっくりと引き下げた。

惨めな姿で、傷だらけで、気を失っている女を一瞥し、目に嫌悪感を満たし、瞳の奥には一片の憐れみや優しさもなかった。

このことから、沢田鶴が橋本奈子に対して少しの情も持っていないことが分かる。この男の心は頑石のように冷たく硬い。

「話し合いは構わないが、星野社長も沢田某に体面を保つ余地を与えるべきだ。橋本奈子はやはり私の女だ。星野社長が容赦なく彼女を処分し、沢田某に少しの面子も残さないとなれば、私の部下たちの前でも顔が立たなくなる…」

広田崇は狡猾に微笑み、軽く息を吐いた。どうやら星野社長の面子は大きく、沢田鶴でさえも三分の忌憚を持つようだ。

彼は小声で笑った。「沢田様、この愚かな女がしたことをご存知ですか？このような愚かで無知な女をあなたの側に置いておくことは、あなたの身分を汚すだけでなく、いずれもっと大きな災いを引き起こすでしょう。沢田様は本当にこの女のために、命がけで築き上げた江山を無駄にするおつもりですか？あなたがこの件に手を出さなければ、外部の誰も星野社長があなたの女を処分したことを知ることはありません。後日、星野社長が訪問される際には、きっと大きな贈り物を用意されるでしょう…その贈り物とは、金か女か、二つに一つです…」

……

星野寒は初陽を抱えてホテルの部屋に戻り、彼女をそっとベッドに寝かせた。

初陽の瞳の上のまつげは垂れ下がり、視線は焦点を失い、どこかをぼんやりと見つめていた。

彼女の白く柔らかな頬は、うっすらと灰白色を帯び、唇も色を失っていた。

寒の瞳が沈み、心は乱れた。彼はベッドに腰掛け、再び初陽を腕に抱き寄せ、大きな手のひらを彼女の背中に優しく置き、一度一度優しく叩いた。