第219章 俺様が君を藍閣に連れて行って羽を伸ばそう

可美が部屋に入って初陽を助けようとした矢先、村田城が彼女を一気に押し出し、手際よくドアを閉めた。

城は身のこなしが素早く、動きがかっこよく、片手で可美を押しながら廊下の反対側へと歩いていった。

「ちょっと、なんで初陽を中に閉じ込めるのよ?星野社長の容態が良くないんでしょ?初陽一人でどうやって対処するっていうの?彼女は医者じゃないのに、どうやって星野社長の病気を治せるっていうの?」可美はわあわあと騒ぎ立て、明らかに初陽のことを心配していた。

「彼女こそがボスの薬なんだよ。対症療法として効果抜群さ。他に医者なんて必要ないだろ?さあさあ、俺様が藍閣に連れていってやるから、派手に遊んで、派手に金使おうぜ。藍閣の若旦那たちは、みんな芸能人レベルのルックスだぜ?見に行きたくないか?」

「……」

城のこの一言で、可美は見事に口を閉ざした。

「え……芸能人レベルのルックス?マジで?村田さん、嘘ついてない?」さっきまでわめいていた可美の声は、次の瞬間には完全なファン少女モードに変わっていた。

初陽は呆れて額に手を当てた。可美の節操はどこへ行ったのか、原則はどこへ?彼女たちの友情は、その「芸能人レベルのルックス」の藍閣の若旦那たちに勝てないというのか?

二人の足音は、だんだんと遠ざかり、やがて消えていった。

初陽は泣きたい気持ちで、可美を何十回も心の中で呪った。

この色に目がない奴め、初陽は彼女と絶交することに決めた……

部屋の中には、彼女と彼の二人だけが残された。

彼女は顔を下げ、ゆっくりと星野寒を見つめた。今の彼は、まだ顔色は良くないものの、明らかに先ほどよりも落ち着いていた。

彼女の手首をきつく掴んでいる彼の腕は火のように熱く、その熱は初陽の心の奥底まで伝わってきた。

初陽は隣の椅子を引き寄せ、ゆっくりと腰を下ろし、彼が自分の腕を抱きしめるままにした。

彼女は眉目清らかに、波風立てることなく彼を見つめていた。

「寒、今のあなたは、本当のあなた?」初陽はつぶやいた。まるで彼に問いかけるようでもあり、自分自身に問いかけるようでもあった。

静かな病室の中で、医療機器のチクタクという音だけが響いていた。

しかしその音は初陽の心には、心地よい音符のように聞こえ、チクタクと彼女の心に流れ込んでいった。