第163章 まだ人を罵る力がある

「いたた、この畜生め、本当に私を殴るとは！この淫売、売女、娼婦、尻軽め……」松田靖は痛みに悲鳴を上げながら、次々と罵詈雑言を吐き続けた。その言葉は耳を覆いたくなるほど汚らわしかった。

「殴って……まだ罵る力があるなんて、続けて……」初陽は歯を食いしばり、必死に抵抗する松田の両腕をしっかりと掴みながら大声で命じた。彼女の瞳の奥には血に飢えた怒りの炎が燃えていた。その炎は熱く激しく、殺気に満ちていた。

前世も今生も、誰も彼女の頬を叩いたことはなかった。彼女には権力も地位もなく、半生を孤独に生きた孤児だったが、これほどまでに侮辱されたことは一度もなかった。

今日、彼女は松田にこの平手打ちの代償を払わせるつもりだった。一発の平手打ちに対して、十倍返しにするつもりだった。

パンパンパン、絶え間なく響く平手打ちの音が、闇夜に鋭く響き渡った。

この道は人通りが少なく、行き交う人もいなかった。それが初陽にとってさらに好都合だった。

彼女は松田が人生を疑うほど打ちのめし、背後の黒幕を吐かせるまで殴るつもりだった。

彼女の居場所を知る人は多くない。範囲を絞って推測すれば、この穴だらけで愚かで滑稽な拙い策略を企てた人物が誰なのか、ほぼ見当がついていた。

「この……この……」何度か「この」と言いかけたが、その先の言葉を発することができなかった。松田の頬は血で覆われ、青紫色に腫れ上がり、口の端からは絶えず血が流れ出ていた。

彼女は舌がもつれ、口の中は血の泡だらけで、もはやはっきりとした言葉を発することができなかった。

「初陽、もういいんじゃない？私の手、痛くて痺れてきたよ……」可美は手を止め、初陽の方を見て意見を求めた。

初陽は息も絶え絶えの松田をじっと見つめ、わずかに頷いた。「もういい……」

言葉が落ちると同時に、彼女は手を放し、松田を強く突き飛ばした。

松田はよろめきながら地面に倒れ込み、低く痛みを訴える声は嗄れていた。