「ゲイに変えるのは難しい、ストレートに戻ったら手遅れだ！」

宵月司星は薄い唇を軽く上げ、その笑みには三分の妖艶さと三分の奔放さがあり、残りは何とも捉えどころがなかった。

彼は優雅に歩み寄って木村伊夜の前に立つと、突然片手を伸ばして彼女の顎を持ち上げた。「俺を弄んでいるのか、ん？」

「そんな、とんでもない」伊夜は首をすくめた。

彼女は顎を少し上げ、男の指先から逃れると、視線を天井へと漂わせた。

こういう時は、とぼけるのが一番だ。

「お前が恐れることなどあるのか？」司星は軽く嘲笑い、その声には皮肉が込められていた。

それを聞いて、伊夜は舌を少し出した。

彼女の小さな思惑は、すでにこの男に見透かされていたようだ。でも、彼女にはまだまだ手があるのだ！

「今夜はおとなしく寝るんだぞ」司星は彼女を横目で見て、深い声で警告した。

さもなければ、彼女に何をするか保証できない。

「寝る...寝るの？」

伊夜の視線は柔らかそうな大きなベッドへと向かった。ベッドの上にはハート型に並べられた赤いバラが置かれていた。

しかも、中央にはセクシーなパジャマセットが...

これは寝るつもりなのか、それとも彼女を寝かせるつもりなのか？

「若帝、寝る前に...お風呂に入った方がいいんじゃない？」伊夜は視線を彼に戻し、首を少し傾げて探るように尋ねた。

お風呂は犯行に好都合だし、入らなくても何とか誘導して入らせなければ。

「ああ」司星は彼女を審査するように見つめ、低い声で答えた。

直感が告げていた、彼の星夏がまた何かを企んでいると。

「じゃあ早く行って早く行って！」伊夜はすぐに目を細めて笑い、彼に手を振った。

彼女はまるで司星が自分の前から一刻も早く消えてくれることを願っているようだった。それも早ければ早いほど良いと。

司星は目を細め、唇の端を軽く引き上げた。「俺が風呂に入っている間に逃げ出そうとするなよ」

彼は窓を見上げ、宵月凌空が自分よりも用心深く、すでにしっかりと鍵をかけていることに気づいた。

「しないわよ、しないわよ！」伊夜は相変わらず笑顔だった。

司星は冷ややかに鼻を鳴らした。彼女の言葉など絶対に信じない。

この女性は笑顔が明るければ明るいほど、頭の中の悪知恵も多いのだ。

彼はもうお見通しだった。

「若帝、どうぞお風呂にお入りください」

伊夜は軽く腰を曲げ、敬意を示しながらも従順そうに見えた。