「ねえ、こっそり教えてよ」
杉山由夏は突然手を伸ばし、木村伊夜の肩に腕を回した。肩を組んだその姿はとても親密そうに見えた。
「あなたのお姉さんって、超クズで白々しい演技が得意で、いつもトラブルを起こしたり、わがままを通したりして、それでも星夏を完全に取って代われると妄想してるの?」
由夏はずっと思っていた。星夏と協力すれば、これから色々と面白いことができるはずだと……
だって、ちょっと想像するだけでも何幕もの大芝居が浮かんでくる。
クズを懲らしめられるなら、人生は退屈じゃない!
「どうやら……杉山由夏女王は興味があるみたいね。私と一緒に鈴木美桜を引き裂いてクズを踏みつけるのに」伊夜の笑顔には深い意味が込められていた。
宵月司星は眉を上げ、彼女のこの茶目っ気たっぷりな様子を見て、少し困ったように首を振った。
この女は、どうしてちっとも大人しくできないんだろう?
「サインする!今すぐサインする!」
由夏は赤い唇を上げ、すぐに契約書を取り戻し、乱雑な筆跡で自分の名前を書き入れた。
「この女王様の人生信条はクズを懲らしめること」彼女は再び伊夜の顎を持ち上げ、ウインクした。「あなた、本当に私の好みよ」
由夏は突然近づいてきた。「どう?考えてみない?司星を捨てて私と来れば、贅沢三昧させてあげるわよ」
伊夜も遠慮なく応じた。
彼女は片腕で由夏の首に腕を回し、顎を少し上げた。「私が上で、あなたが下なら、考えてもいいわ」
司星:「……」
大規模な百合現場だ。しかもこの女は彼を裏切る気か。
ある人物が急に立ち上がり、長い脚で書斎の机から回り込んで、伊夜を自分の腕の中に引き寄せた。
彼は挑発的に由夏を見た。「天に昇りたいのか?」
「いや、違う」由夏は首を振り、赤い唇の弧がさらに大きく上がった。「私は彼女の上に乗りたいの」
彼女は細い指を伸ばし、伊夜を指さした。
司星の細長い目が細められ、警戒して彼女を見た。「契約はなし。工藤朔空に違約金を取りに行け」
由夏は気にせず口をとがらせた。
彼女は腕を下ろし、胸の前で腕を組み、再び伊夜にウインクした。「彼女に聞いてみなよ。私を選ぶか、あなたを選ぶか」
その自信満々な様子に、司星は本当に少し焦った。
案の定、伊夜は彼の腕から抜け出し、迷うことなく再び由夏の肩に手を回した。