石原山軒、君は本当に優秀だ

木村伊夜はほっと息をついた。

彼女はトイレのドア枠に身を寄せ、外に頭を少し出して、こっそりとホールの様子を観察した。

あのイケメンが新しいダンスパートナーを見つけたのを確認してから、伊夜は堂々とトイレを出た。

「ふん、男なんて……」

こんなに早く諦めるなんて、やっぱり大したことないわね。

伊夜は小さな鼻歌を歌いながら、ホールに足を踏み入れた途端、顔を上げると気高い姿が目に入った。

北村美晴は優雅に白鳥のような首を持ち上げ、整った顔立ちは高慢で魅力的で、眉目の間には少し傲慢さがあり、おとなしい善人には見えなかった。

「あなたが木村伊夜よね?」と彼女は尋ねた。

伊夜は無関心に彼女を眺め、何も答えなかった。

美晴は眉をひそめ、明らかに彼女の態度に満足していなかった。「ここは芸術の殿堂よ。花瓶が好き勝手に振る舞う場所じゃないわ」

伊夜はまだ無関心だったが、この女の子が学院に対して並々ならぬ敬意を持っているように感じた。

「でも、あなたが専攻で全国2位の成績で皇家芸術学院に入ったって聞いたわ。私とはわずか0.5点差だけね」

美晴は二杯のシャンパンを持ち、そのうちの一杯を彼女に差し出した。「木村伊夜、私はとりあえずあなたを私に匹敵するライバルとして認めるわ。私の期待を裏切らないでね」

伊夜:「……」

なぜか突然ライバルができた。

それに、彼女が美しいというだけで花瓶扱いされるの?

「ねえ、あなた何か勘違いしてない?」

伊夜はシャンパンを受け取らず、自由奔放に笑った。「美しいのは他人が褒めてくれること、才能は先生が認めてくれること。私は生まれつき美しくて頭もいいの。それが罪になるの?」

彼女は美晴のあの高慢で軽蔑的な口調が気に入らなかった。まるで彼女のライバルになることが、彼女からの恩恵であるかのように。

恩恵って何よ、バカじゃないの!

彼女とライバルになれるなんて、明らかに歌姫星夏から小小スターへの恩恵でしょ!

「あなた……」

美晴の表情が曇った。「木村伊夜、私はあなたを持ち上げてあげてるのよ!調子に乗らないで!」

彼女はシャンパンを伊夜の手に押し込み、ピンクの唇を軽く曲げた。「いいから、私に乾杯しなさい!これからは、私たちは演技面でのライバルよ!」

伊夜の唇の端が軽く動いた。