木村家の名流、福を受ける資格なし

宵月司星は墨色の深い黒だった。

彼は警備員に木村凪咲を止めさせようとしたが、木村伊夜が軽く首を振るのを見て、「彼女を行かせて」と言った。

彼女は両手をきつく握りしめ、桃花のような瞳に閃いた決意と悔しさの色が、どこか切なく感じられた。

「伊夜、何があったの?」

杉山由夏が伊夜の側に歩み寄り、困惑した様子で彼女を見つめながら、小声で尋ねた。「どうして彼女を行かせたの?」

凪咲の仮面を直接引きはがせば、最高に気持ちいいのに!

彼女はまさにその顔面崩壊の瞬間を見るのを楽しみにしていたのに、こんな風に唐突に終わってしまうなんて...なんだか少し残念だ。

「まだその時ではないわ」伊夜は美しい瞳を微かに輝かせた。

コンサート...

世界ツアーの時、彼女は必ず歌姫星夏としての地位を完全に取り戻すだろう!

その時こそ、彼女は凪咲の正体を徹底的に暴露するつもりだった。

「先輩は実は彼女の仮面を公衆の前で引きはがすべきでした」

北村美晴は伊夜を見つめ、今の態度はどこか堂々としていた。「こんな人、先輩がどうして見逃すんですか?」

この様子は、教室での宣戦布告の時の冷たい傲慢さとは全く異なり、まるで別人のようだった。

しかし伊夜は笑った。「仮面を取って何になるの?」

彼女は少し困ったように薄いピンク色の唇を曲げ、凪咲が先ほど去った方向を見つめ、静かにため息をついた。

「こういう人ってね、私の才能と美貌を妬んで、わざわざ話題に乗っかろうとしてるだけなのよ」

彼女はまた冗談めかして続けた。「もし私が彼女の仮面を取って、みんなに彼女の顔を見せたら、それこそネットアイドルになるチャンスを与えることになるじゃない?」

美晴:「……」

女神の思考回路は、やはり誰にも敵わない。

凪咲は仮面を外し、新しいドレスに着替えて、慌ただしくホステスとして万禧宴会場に戻った。

会場に足を踏み入れるなり、彼女は伊夜のそのような発言を耳にし、顔色が青ざめたが、すぐに取り繕った。

「星夏様」凪咲は優雅に伊夜に近づいた。「申し訳ありません、私と母は少し用事があって席を外していました。まさかこんな短い時間の間に、こんなことが起きるとは思いませんでした」

彼女の笑みは温和で優雅だった。

しかし伊夜はどこか不快に感じた。「木村さんと藤原さんはこのようにお客様をもてなすのですか?」