帝晟グループ。
宵月司星は入札側とリモートで交渉し、正式な入札日に改めて入札書の詳細内容について話し合うことが許可された。
これはつまり、まだ余地があるということだ。
「ほら、満充電して返すよ」工藤朔空がオフィスのドアを開けて入り、何気なく携帯を差し出した。
司星は細長い目を少し細めた。
彼は顔を上げて朔空を見つめ、その意図を疑っているようだった。そして軽く鼻で笑い、「良心が痛んだか?」
司星は携帯を受け取り、確かに満充電になっていることを確認した。
通話履歴には木村伊夜からの無数の不在着信があったが、メッセージは一つもなかった……
「もう入札側と話がついたんじゃないのか?」朔空は肩をすくめた。「それに、今はもう君が薔薇園に戻って元凶と接触することを心配する必要もないしね」
その言葉を聞いて、司星は突然固まった。
彼は眉をきつく寄せ、「どういう意味だ?」
朔空はずっと伊夜がスパイだと信じており、司星を納得させる証拠を見つけると豪語していた。
彼は伊夜が罪の意識から逃げ出す日を待っていた……
そして案の定、その日が来たようだった。
「木村伊夜はもう薔薇園を出て行ったよ。跡形もなく消えて、連絡も取れない」朔空は口角を歪めた。
任務を完了して罪悪感から逃げ出した以外に、彼は他の理由を思いつかなかった。
その言葉を聞いて、司星の目の色が急に暗くなった。
彼は突然立ち上がり、携帯をきつく握りしめた。「ありえない」
司星が薔薇園に帰らなくなった最初の日から、伊夜は彼に絶え間なく電話をかけ続けていた。
彼は携帯の履歴を見下ろした。
しかし、確かに数日前から連絡が途絶えていることに気づいた。
「彼女がスパイであるはずがない、絶対にありえない」
司星の目は漆黒に沈み、「すぐに調べろ、彼女が最近誰と接触したか、どこに行ったのかを」
こんなに長く連絡がないということは、もし彼女に何かあったのなら、司星は絶対に自分を許さないだろう。
朔空は諦めた様子で、司星を大バカ者を見るような目で見た。「山崎に電話して聞けば一発でわかるだろ」
伊夜が行方不明になる前は、薔薇園で曲作りに没頭するか、皇家芸術学院で授業を受けるかのどちらかだった……
接触する人も普段の人たちだけで、何が起こるというのだろう?
「ここを見ていろ、俺は薔薇園に戻る」