二人が去っていくのを見て、棚木知恵はまだ後ろから叫んでいた。「お婆様、お爺様へのプレゼントを渡すのを忘れないでくださいね!」
石丸お婆様は石丸お爺様に引っ張られながら、振り返って知恵を見て、にこやかに言った。「安心しなさい!」
老夫婦が去ると、石丸お爺様は少し居心地悪そうにして、「彼女が私にプレゼントをくれたのか?」
「あなたは彼女を見下していたんじゃなかったの?なぜそんなことを聞くの?」
石丸お爺様は言葉に詰まり、しばらく何も言えなかった。
石丸お婆様はふんと鼻を鳴らした。「自業自得よ。あなたの気持ちを考えて、ちーちゃんをパパラッチ扱いしたことを彼女に言わなかったけど、あなたは彼女に謝るべきよ。これからはそんな態度を取らないで」
石丸お爺様は顔を赤らめ、「ああ、わかったよ!」
「彼女が写真を撮るのが好きだって聞いたわ。英庭のお父さんのコレクションに50年代のライカのカメラがあるでしょう?」
石丸お爺様はすぐに決断した。「それを彼女にあげてもいいかな?」
「それは息子の嫁に聞かないとね。息子の物はすべて彼女が管理しているから」
石丸お爺様はただうなずくしかなかった。
棚木知恵は自分に豪華なプレゼントが待っていることなど知る由もなかった。
今日、清水家で受けた屈辱は石丸お爺様のおかげですっかり吹き飛んでしまい、むしろ石丸英庭の力を借りたことを思い出した。
知恵はため息をついた。英庭に借りがどんどん増えていく。
本当に身体で返すべきなのだろうか?
近づいて知恵の耳元で聞こえた息遣い、そして彼女の肌に降り注いだ吐息は、まだその場所で騒々しく存在しているようで、知恵の耳を赤くさせた。
英庭の言うことは間違っていない。彼らは夫婦であり、愛し合うことは当然のことだ。彼は若く、欲望を発散させたいと思うのは当然だ。
彼は彼女を強制する意図はなかったが、昨夜の親密さは以前よりも深いものだった。知恵は自分が英庭と関係を持つ可能性について考えざるを得なかった。
でも……
英庭はできないんじゃなかったの?
知恵は顔をしかめて考えた。
以前、彼と結婚することは生涯独身のようなものだと言われていた。関係を持つことなど考える必要もないと。
しかし今の状況は、以前の予想とはまったく違っていた!
知恵は非常に悩み、激しく頭を振った。