世界は静かだった。
いや──静かすぎた。
黒い雨が止んだ後、
空には星一つ見えなかった。
街灯は消え、時計は止まり、人々の声は闇に溶けた。
そして、
誰もが気づいた。
「……神が、いない」
信じる者も、疑う者も、罵る者も。
全ての人間が、
本能で感じていた。
神はもう、この世界を見ていない。
裁かれず、導かれず、
ただ、放置された世界。
その日から、
“法則”は崩れ始めた。
死者が目を開け、
影が動き、
名前のない“何か”が夜を歩き始めた。
祈りは契約へと変わり、
願いは代償を伴った。
そして──
その“代償”を背負う少年が、一人いた。
雨に濡れた制服。
震える指。
そして、揺るがぬ瞳。
「……俺がやるしか、ないんだな」
彼の名は──天宮シン。
光なき世界で、
彼は“契約者”として、歩き出す。
物語は、まだ始まったばかりだ。