木吒は遠くに七匹の蜘蛛の洞窟が現れるのを見て、急いで隠れる場所を探した。
密かに笑いを漏らし、「盤絲洞の蜘蛛精の美しさといったら、沙塵のような男は耐えられないだろう。たとえ耐えられたとしても、彼女たちには勝てないだろう」
彼は呟いた:「貧僧の記憶では、盤絲洞の蜘蛛精の中で最も強い者は金仙上級境界に達しており、最も弱い者でも金仙初級境界の実力を持っている」
沙塵は流砂河で修練中で、迫り来る危険に気付いていなかった。
彼は最後の無極金丹を服用し、さらに一品仙藥を一つ取り出して、一ヶ月かけて完全に消化した。
しかし。
彼の修為はまだ金仙初級境界に留まっており、ただより安定したものになっただけだった。
「私の天賦はまだまだだな。小さな天才程度で、一品仙藥の効力も三四割しか吸収できない。もったいない限りだ」
「いつになったら天賦を変える報酬が得られるのだろうか。修練を続けて突破し、選択を得るしかないようだ」
沙塵は修練による突破と選択の獲得のことしか考えていなかった。
他の選択を得る機会については、あればあるし、なければ強要しないという態度だった。
できることなら、この選択さえ要らない。誰かに面倒を持ち込まれたくなかった。
なぜなら、面倒は危機を意味するからだ。
沙塵の最大の願いは、平穏無事に、順調に永遠まで引きこもることだった。
危険なことは冒険者に任せておけばいい。
彼は引きこもりでいたかっただけだ。
しかし。
天は人の願いを聞き入れない。
沙塵が別の一品仙藥を取り出して練気力しようとした時、流砂河の外から澄んだ美しい声が聞こえてきた。
「巻簾将軍様、どちらにいらっしゃいますか?私たちは盤絲洞の七娘様です。あなたの名声を慕って参りました。お会いいただけませんでしょうか?」
「巻簾将軍様、どうかお願いです。私たちにお会いください。本当に悪意はございません。ただあなたのお人柄を慕い、お力添えしたいだけなのです」
声は遠くなったり近くなったりし、一人の声ではなかった。
沙塵は火眼金睛の術を使うと、七匹の蜘蛛精が流砂河の水面を飛び回り、彼を探し回っているのが見えた。
今や流砂河は広大無辺となり、数万里に渡って横たわり、幅も万里あり、まるで環状の海のようだった。
七匹の蜘蛛精は河面上で塵のように小さく見えた。
万里の河面から河底にいる沙塵を見つけ出すのは、蟻が大木を揺るがすようなものだった。
沙塵は眉をひそめ、つぶやいた:「まさか彼女たちとは。前に小白龍様が戻って彼女たちと衝突した後、ここのことは忘れたと思っていたのに。まだ諦めていなかったとは」
蜘蛛精が小白龍様を利用して、沙塵を陥れようとしたからだ。
沙塵も負けじと、一度に解決しようと小白龍様を騙し、戻って濯垢の泉を放出させ、蜘蛛精と対決させた。
こうして。
小白龍様も蜘蛛精も、彼に構っている暇がなくなった。
しかし、今また蜘蛛精が現れた。
しかも、こんなに優しい声で、まるで彼のためを思うかのように。
沙塵はもちろん罠にはまるつもりはなかった。蜘蛛精が、彼が小白龍様を唆して濯垢の泉の水を放出させたことを知らないはずがないと考えた。
彼女たちは必ず彼を憎んでいるはずだ。
「気運者である七匹の蜘蛛精が宿主を探しており、報復を企んでいます。以下の選択肢があります」
「選択一:先手を打って出て、蜘蛛精を待ち伏せし、彼女たちを打ち負かして従わせ、盤絲洞を占領する。報酬として法寶【九齒釘耙】を獲得。九齒釘耙:豚八戒の法寶で、太上老君様の神鐵で作られたもの」
「選択二:進んで和解し、恨みを水に流す。報酬として功法【混元道法】を獲得。混元道法:八九玄功をも上回る品級で、道祖様が講道の際に先天神魔の上位者たちに伝授した功法」
沙塵は混元道法のことを聞いて、飛び上がりそうになるほど興奮した。
道祖様の講道の中で上位に数えられる道法の一つである混元道法は、三千の神魔が争って修練しようとした道法だ。
品級は八九玄功をはるかに超えている。
沙塵は修為が金仙境界に達し、修練速度が遅くなったことを感じ、自分の天賦の低さを嘆いていた。
結果として天賦は変わらなかったものの、先に功法が変わった。
これでも修練速度を上げることができる。さもなければ、一品仙藥があっても三四割しか練気力できない。
しかも、一つの仙藥を練気力するのに一二ヶ月もかかっていた。
今やより優れた混元道法に変えることで、修練速度が上がり、仙藥を無駄にせず、練気力の時間も短縮できる。
これで彼の修為を急速に高められ、修為があれば、生き残る機会も増える。
沙塵は思いもよらなかった。東が暗ければ西が明るい、というように。
天賦は一時的に変わらなくても、功法は強化された。
しかし混元道法を獲得するには、まず蜘蛛精と和解しなければならない。
ただ、蜘蛛精は今は話が通じそうに見えるが、彼が出て行けば牙をむくかもしれない。
沙塵は少し考えてから、分身の術を使って分身レベルを自分の代わりに水から出し、蜘蛛精の態度を探ることにした。
その時。
蜘蛛精は万里の河面を探し回っていたが、沙塵の居場所が見つからず、次第に忍耐を失いつつあった。
突然、彼女たちは遠くの流砂河の水面に大きな渦が現れるのを見た。
そして一つの人影が水面を踏んで上がってきた。その漢の方は身長が一丈二尺もあり、非常に逞しく、髪を振り乱し、月牙鋤を手に持ち、野武士のような姿だった。
隠れていた木吒は驚いたが、すぐに得意げに笑った。「本当に臆病者になるかと思ったが、やはり美女の声を聞くと我慢できなかったようだ」
「仏門の大計は、達成できそうだ」
木吒は密かに笑った。
蜘蛛精は玉香よりも美しく、花の言葉よりも真実味があった。柳眉は遠山のように、唇は桜のように紅い。髪飾りには翡翠が輝き、金蓮は紅い裳に映える。まるで嫦娥が下界に降り立ったかのよう、仙女様が凡世に落ちてきたかのよう。
ボタンを外し、絹の帯を解く。乳房は銀のように白く、玉体は雪のように清らか。
肘は凝った紅のよう、香る肩は粉を付けたよう。腹は柔らかく綿のよう、背中は光沢があってきれい。膝は丸く、金蓮は三寸と小さい。その間にある情趣は、風流な穴を覗かせる。
このような七人の美女に、沙塵が心動かされないはずがないと。
これから沙塵が妖界に堕ちるのを待ち、しばらくしてから師匠に直接渡化の境地に導いてもらえばいい。
しかし。
彼が立ち去ろうとした時、沙塵が現れ、挨拶をしただけだった。
蜘蛛精も沙塵だと分かると、すぐに表情を変えた。
彼女たちは瞬時に突進し、沙塵を取り囲み、言葉もなく、長剣で沙塵を討とうとした。
木吒は顔色を変え、助けに出ようとした。
しかし、もう遅かった。
蜘蛛精の速さは非常に速く、彼女たちは皆金仙の修為を持ち、宝剣を手に、水から出てきた巻簾将軍様を斬り殺した。
しかし、木吒が悲しむ暇もなく、不思議に思った。
蜘蛛精も大いに驚いた。「なんと分身レベルか」
出てきたのは沙塵本人ではなく、彼の分身だった。
これに木吒はほっと胸をなで下ろし、同時に複雑な表情を浮かべた。「あいつは用心深いな」
蜘蛛精は非常に悔しがり、まさか偽物だったとは思わず、これで沙塵はまた死んだふりをするだろうと。
流砂河の中の沙塵は、危なかったと密かにため息をついた。
「まさに蜂の尾の針、最も毒なのは女心。彼女たちは確かに私を誘い出して殺そうとしていたのだ」
「どうやら私が恨みを水に流して混元道法を得るのは、そう簡単ではないようだ」
彼は拳を握りしめ、呟いた:「混元道法のためなら、諦めはしない」