第1章 バカだけが恋愛する
「北原君、私と付き合ってください！」
ラブレターが突然北原秀次の目の前に突き出され、後ろに身を引かなければ、危うく刺されるところだった。彼は目の前の女の子を少々煩わしげに見つめ、何を考えているのか分からないまま、しばらくしてから言った。「冰室さん、申し訳ありませんが、今は恋愛する気がないので...」
言葉が終わらないうちに、その女の子は驚いて顔を上げ、信じられないという様子で彼の言葉を遮った。「あの...北原君、私は高崎真子です。」
空気が一気に凍りついた。
北原秀次は少し黙り込んでから、頭を下げて謝罪した——どう考えても、人の名前を間違えるのは失礼な行為だ。しかし、これは彼の責任ではない。この女の子の顔は確かに見覚えがあり、同じクラスの生徒に違いないが、クラスの女子は皆同じ年齢で、普段は同じ制服を着ており、話し方や口調まで似ていて、顔をよく見ていないと...本当に区別がつきにくい。
無言で謝罪した後、腕時計を確認し、急いでいることを示してから、静かに言った。「高崎さん、他に用がなければ、昼食を食べに行きたいのですが。」
名前は間違えたものの、彼の意図は十分に伝わったはずで、繰り返す必要はないと思った。言い終わると高崎真子の横を通り過ぎようとしたが、彼女は素早く横に一歩移動して彼を遮り、焦りながら言った。「ちょっと待ってください、北原君、まだ話が終わっていません！」
彼女は道を塞いだまま、少し恥ずかしそうだが勇気を出して続けた。「北原君、突然の告白は失礼だと分かっています。きっと迷惑をかけてしまうと思いますが、私は軽はずみな人間ではありません！」彼女は説明しながらさらに恥ずかしくなり、顔を少し横に向け、白く細長い指で耳元の黒髪をもじもじしながら続けた。「おととい昼に図書室で北原君を見かけて...」
彼女は話しながらその日の昼休みを思い出していた——柔らかく明るい陽光の中、端正な少年が窓際に座って本を読んでいた。その深い眼差しと真摯な表情...そんな真面目な姿に心を奪われ、胸が高鳴り、安心感と頼もしさを感じたのだ。
「これが一目惚れというものなのかもしれません！笑わないでください！この二日間ずっと考えていました...北原君と一緒になれたらいいなって、まだお互いをよく知らないけれど、もっと北原君のことを知りたいです。でも北原君が他の人を好きになってしまうのが心配で、だから...」彼女は本気だった。北原秀次と付き合ってみたいと思っていたが、しばらく言葉を詰まらせた後、恥ずかしさのあまり続けられなくなり、期待を込めて直接尋ねた。「まずは友達から始めてみませんか？」
友達から恋人へ、三年あれば十分だ。少なくとも、振られて終わるのは避けたい！
頑張れ、真子！
北原秀次は無表情のまま、辛抱強く聞きながら高崎真子の表情を注意深く観察し、かなり誠実であることを確認したが、今は恋愛を考える気がなかったため、直接的に言った。「高崎さん、申し訳ありませんが、はっきり言うと、君は僕の好みのタイプではないんです！」
「えっ！？」高崎は北原秀次が全く動じないことに驚き、誠実な告白に対して友達になる機会すら与えてくれないことに戸惑いながら、少し間を置いて尋ねた。「じゃあ、北原君はどんなタイプが好みなんですか？」
彼女は自分に自信があった。学習成績は相手には及ばないものの上位クラスで、学年でもトップレベル。運動能力も悪くなく、才能面では市立中学校の古典音楽大会で団体一等賞、個人二等賞という優秀な成績を収めている。さらに重要なのは、容姿が整っていて、スタイルも良いことだ——もし北原秀次が黒髪ロング、腰まである髪、スレンダーな体型、優れた気質、あるいは趣味が合うといった条件を出してきても、彼女には完全に自信があった。
しかし、北原秀次の答えは彼女の期待を一気に打ち砕いた。
「高崎さん、僕の好みのタイプはロリです——八歳から十四歳の女の子で、八歳が一番いいですね！」
高崎真子は呆然とした。どんなに自信があっても、十六歳から八歳まで逆行して生きることはできない。しばらく呆然としたあと、信じられないという様子で尋ねた。「あなた...冗談を言っているんですか、それって...変態じゃないですか？」
告白を受けた時に、ロリが好きだなんて、誰が言うの？何なの、これは？これが私の初めての恋心！こんな扱いを受けるの？
「冗談ではありません。僕は変態です！」北原秀次は時間を確認し、時間を無駄にしすぎたと感じた。この後、昼休みを利用して図書室で本を読もうと思っていたので、強調して言った。「十四歳以上の女の子には興味がありません。仕方ないんです、生まれつきなので...それで、高崎さん、もう行ってもいいですか？」
...
北原秀次は急いで学校食堂へ向かった。食堂に向かう学生は多くなく、ほとんどの生徒は家から弁当を持ってきていた——彼は今、一人で遠くから通学している身なのでそういう余裕はなく、学校食堂は政策的な補助があり、味は普通だが値段が安く量も多いため、お腹を満たすには十分だった。
彼は断られた高崎真子の気持ちがどうなのかを考えることもなく、彼女が腹を立てて噂を広めるかどうかも気にしていなかった——彼はロリコンでもなければ変態でもないが、むしろ高崎真子に噂を広めてほしいと思っていた。そうすれば全ての女子が彼を嫌うようになり、もう誰も彼を邪魔しに来なくなるだろう。
高校時代に恋愛なんて、どれだけ愚かでなければそんなことができるのか？結果が見えている恋愛に時間を無駄にするなんて、冗談じゃない！人生はわずか2万日しかない、そんな贅沢は許されない！
でも今の状況では...これらの少女たちを叩くわけにもいかないし、口で罵るのも適切じゃない。自分を貶めて身を守るしかないか。
もう二度と自分を煩わせないでほしい。絶対に来ないでくれ！
これらの少女たちの行動は全く理解できない！一体何のためなんだ？
四月初めの昼下がり、日差しは明るく優しかった。廊下のガラス窓に映る自分の姿を斜めに見つめ、まだ少し見慣れない顔を見ながら、頭痛は相変わらず激しかった——窓に映る少年は痩せ型だが、とても端正な顔立ちで、完璧な剣眉と澄んだ目、整った鼻筋と少し自然な巻き毛は混血児のような印象を与え、テレビドラマで一目見ただけで主人公とわかるような存在感があった。
顔色が少し青白いことを除けば、男である自分でさえ美しい少年だと認めざるを得なかった！
入学してまだ10日も経っていないのに、下駄箱で既に4通のラブレターを見つけ、今日は直接告白までされた。この顔のせいなのか、それとも【魅力値】が高すぎるせいなのか？
高校というのは発情したウサギの群れを一緒に閉じ込めたようなもので、本当に頭が痛い！これら突然現れた面倒事をどうすればいいんだ？顔に硫酸をかけるわけにもいかないし、ポイントを再配分して【魅力値】を10以下に下げるか？でもリセット用の水をどうやって手に入れるかも問題だ...
彼は考え事をしながら食堂に向かい、入口に立っている二人の厄介者を一目で見つけた——今度は男子二人で、私立大福学園の第七期入学式の日に突然、勝手に自分の友達だと思い込んでしまった奴らだ。
「北原、なんでこんなに遅いんだよ！」
痩せて小柄で坊主頭の男子生徒が真っ先に声をかけてきた。北原秀次は彼を一瞥した。この男、内田雄馬は、少し怪しげな顔つきで、実際の性格も...確かに怪しかった。その顔に相応しい通り——良く言えば狡猾そうな目つき、悪く言えば陰険卑劣で、まるで悪役、それも悪の首領に悪知恵を授ける軍師のような存在だった。
趣味は女子を見ることで、まるで腐肉を漁る動物が死骸を観察するような、食べたいけれど完全に死んでいるか不安そうな目つきで女子を見ていた。入学してまだ10日も経っていないのに、女子たちの間での評判は最悪だという——北原秀次は偶然、女子たちの噂話を耳にしたことがあった。みんな内田雄馬君に見られると気持ち悪くて不快で、悪夢の中にいるようだと言っていた。
内田雄馬の隣にいるのは、彼の幼なじみの式島律だ。二人は保育園、小学校から高校まで奇跡的に同じクラスで、もし一人が女子だったら間違いなく将来結婚する青梅竹馬の典型だったのだが、残念ながら男同士なので、親友という形で終わるしかなかった。
内田雄馬とは違い、式島律は北原秀次にとってより好印象だった。この男子は性格が穏やかで、普段もおしゃべりではなく、親友の内田雄馬に対してだけは少々短気なところがあるものの、他人に対しては礼儀正しく、しっかりとした家庭教育を受けてきたことが窺え、思いやりもあり、付き合いやすい方だった。
北原秀次は適当に内田雄馬に頷いたが、内田雄馬は興味津々な表情で近寄ってきて、意地悪く笑いながら小声で尋ねた。「北原、高崎は何の用だったんだ？へへ、告白されたんじゃないのか？」さっき三人で食堂に向かっている途中、高崎真子に追いつかれ、内田雄馬は高崎真子の話を聞きたかったのだが、式島律に無理やり連れて行かれてしまった。今、食堂の入口で待っている間もずっと気になっていた——彼は好奇心が強く、特に男女間の出来事を探りたがった。
北原秀次は答えを避け、そのまま食堂に入りながら微笑んで言った。「お待たせしてすみません、早く食事にしましょう！」
そう言って先に入っていったが、内田雄馬は最初は北原秀次をからかうつもりだけだったのに、北原秀次が答えないことでかえって本当に疑い始め、驚いて尋ねた。「マジで告白されたのか？」
北原秀次は認めたくなかったが、こんな些細なことで嘘をついて自分の信用を損なうのも嫌だったので、曖昧に頷いた。すると内田雄馬はその場で固まり、しばらくして我に返ると、すぐに北原秀次の後を追いかけて矢継ぎ早に聞いてきた。「返事はどうしたんだ？ああ、絶対OKしただろ！」彼は胸を叩いて嘆いた。「高崎はいい子だぞ、可愛いし、スタイルもいいし、俺もずっと狙ってたのに、まさか先を越されるとは！」
北原秀次は呆れた様子で彼を一瞥し、「断ったよ」と言った。
内田雄馬はさらに驚き、北原秀次の傍にぴったりとくっついて、首に腕を回そうとしながら、しつこく言い続けた。「断ったって？北原、お前バカなの？高校は修羅場だぞ、早い者勝ちなんだよ。こんな先手を打てるチャンスを逃すなんて？高1で彼女ができるのに、何を望んでるんだ？もったいない、もったいない...絶対後悔するぞ...」
北原秀次は耳を貸さなかった。内田雄馬は普段から発情期のウサギのようで、今日も例外ではなかった。彼は販売窓口に直行し、急いで食事を買おうとした——やるべきことはたくさんある、時間を無駄にはできない！
勉強して、名門校に入学し、起業して、事業で成功を収め、経済的基盤ができてから結婚・出産する、これこそが正しい人生の道筋だ。
今、恋愛なんてするのはバカげている！