日本の居酒屋は江戸時代に起源を持ち、当初は様々な酒類を販売することを主としていましたが、後に酒のつまみや客が飲酒しながら談笑できる場所を提供するようになりました。今日では、居酒屋はサラリーマンたちが仕事帰りに必ず立ち寄る場所となり、一緒に一杯飲みながら上司の悪口を言ったりして、時には一晩で3、4軒はしごして、仕事のストレスを完全に発散させるのです。
北原秀次が着替えを済ませて出てくると、春菜は黙ったまま彼をホールに連れ戻し、静かに言いました。「まずは台所の仕事から始めましょう。」
給料をもらって働くからには、北原秀次にもそれなりの職業倫理はありました。言われるがままに春菜について台所へ向かいます。台所はホールの一部といってもよく、シェフは直接お客さんと向き合い、しかも中は広々として清潔で、油煙も全くありません。3、4台のコンロ、5、6個の鍋、オーブンや揚げ機もあり、しかもすべて新しく見え、このお店もまだ開店して間もないようでした。
夏纱と夏織の双子が地面に座って野菜の下ごしらえをしていましたが、北原秀次が入ってくるのを見て、揃って顔を上げ、彼の細い青い和服姿を興味深そうに眺め、彼に向かってウインクをし、頭を寄せ合ってクスクス笑い、先ほどの殴り合いなど大したことではないという様子でした。北原秀次も彼女たちに微笑み返し、その後は春菜の台所用具の説明に専念しました。
春菜は細やかな声で、よく使うものがどこにあるかを全て説明し、それから静かに言いました。「うちは酒類の販売が主で、食事は新鮮な野菜以外は基本的に半製品です。油で揚げたり、焼いたり、炒めたりするだけでいいんです。もちろん、オムライスやソースオムライスなどの定食も提供していますが、どれも簡単です。主任シェフは私の父で、私が助手、そしてこれからはあなたも加わります。」
「問題ありません!」北原秀次は返事をしました。居酒屋での仕事経験はありませんでしたが、前世で唐揚げ屋でかなり長く働いていたので、そう大差ないだろうと思いました。
彼らが話している間に、廊下の暖簾がめくられ、福泽直隆が出てきて、北原秀次に微笑みかけると、すぐに鍋を温め、野菜を切り始めました。