「向かいの店長が彼を探してる?」冬美は少し躊躇いながら尋ねた。「見間違いじゃないの、春菜?」
「いいえ、お姉さん。あのデブは体型で分かりやすいわ」
冬美は不安げに尋ねた。「何の用かしら?引き抜きかな?」
「分からないけど、話し終わった後すごく嬉しそうだったわ!」
冬美は急に警戒し始めた。「裏切り者になるつもりだと思う?」
春菜は首を振り、静かに言った。「お姉さん、北原ニーサンは私たちのためにもう十分してくれたわ。もっと大きな店に行きたいなら、それは裏切りとは言えないと思う。確かに、うちでは少し我慢してもらってたし」主にお姉さんが彼といつも言い争いをしていて、彼が耐えられなくなって環境を変えたいと思うのも分かる。
冬美はしばらく考え込んでから、心配そうに尋ねた。「もし...もし彼が出て行ったら、今のあなたで店を切り盛りできる?」
「無理よ、お姉さん」
「じゃあどうすれば...」冬美は眉をひそめて考え込んだ。「純利益の25パーセントを取るって自分で言い出したのに、今になって不満なの?」
「今どういう状況なのかまだ分からないわ。さっき遠回しに北原ニーサンに聞いてみたけど答えてくれなかった。二姉さんに聞いてもらったほうがいいんじゃない?」雪里は北原秀次と一番仲が良く、普段から適当なことを言っているから、間違ったことを言っても大目に見てもらえる。春菜は雪里が一番適任だと思った。
「確かにこれは重要な問題ね。今の私たちは彼なしでは立ち行かないわ!春菜、二姉を呼んできて!」冬美は手で軽く腹部を押さえ、胃がまた少し具合悪くなってきたのを感じた。北原秀次は今や彼女たちの家族にとってとても重要な存在だ。もし本当に彼が出て行ってしまったら、どうすればいいか分からない―最悪の事態を想像すると、思わず不安に駆られた。
春菜は「はい」と答えて出て行き、しばらくして雪里を連れて戻ってきたが、後ろには夏織夏沙もついてきていた。二人は怪訝な顔をして、部屋に入るなり声を揃えて尋ねた。「何を相談するの?どうして私たちを呼ばないの?」
冬美は不機嫌そうに言った。「家の大事な話よ。あなたたちには関係ないわ」