第155章 北原兄

「秀次、約束した金魚だよ」雪里は嬉しそうに北原秀次に大きな目玉の金魚を渡した。これは露店の主人が売っていた「珍品」で、今は直接雪里にプレゼントされたものだ。

その金魚は袋の中でぼんやりと尾を振っていたが、北原秀次は受け取らなかった。こんなものを何に使うというのだろう？

しかし彼は笑って言った。「お店で飼おうか」。命あるものだし、金魚すくいはよく批判されるのは、多くの魚を死なせてしまうから——多くの人が捕まえた後どうするか考えずに遊んでしまうのだ。

雪里は嬉しそうに頷き、袋越しに金魚と少し遊んだ後、左右を見回して、北原秀次の袖を引っ張って小さな足取りで走り出した——浴衣と下駄を履いているのでこれしかできない——「もうすぐ時間だよ！秀次、花火を見に行きましょう。いい場所を知ってるの」

お盆の行事とはあまり関係ないように思えるが、日本のお盆には確かに花火を打ち上げる。これは徳川幕府第八代将軍が始めた良い習慣だ。当時大飢饉が起こり、人肉食の事件が多発した。翌年のお盆に、この将軍は餓鬼が人を食べることに味をしめて、また肉を求めることを防ぐため、花火を打ち上げて悪鬼を追い払うよう命じた。この習慣は今日まで続いている。

もちろん、現代では亡くなった人々と共に楽しむという意味になり、人を...お化けを追い払うという意味合いはなくなった。そして集団で開催され、三日間続けて打ち上げられ、十六日の未明に死者がナスに乗って黄泉に帰るまで続く。その時には山焼きも合わせて行われ、道中の親族（親鬼）を妖怪や魔物が襲わないよう追い払う——地域によって風習は異なり、関中このあたりは木造建築が多いため川沿いで行われ、九州では墓地で行われる。

雪里は北原秀次を引っ張って高台に着いた。ここからは遠くの小川が見え、花火見物には絶好の場所だった。すでに多くの人が集まっていたが、北原秀次が別の場所を探そうとした時、雪里はすでに彼を引っ張ってその群衆の方へ向かっていた。「あは、ずっと見かけないと思ったら、ここにいたんだ！」

そこにいたのは半大の男子学生たちで、おそらく今来たばかりのようで、地面に大きな毛布を敷いていた。果物などを抱えている者もいたが、雪里を見るとすぐに手にしていたものを置き、一斉に喜んで駆け寄ってきた。「姉さん！姉さん！」

雪里は笑いながらこの子の頭を撫で、あの子の肩を叩き、まさに姉貴分の風格だった。そして北原秀次を指さして「これは秀次よ。お兄さんと呼びなさい！」

「お兄さん、こんにちは！」中学生から小学生まで二十人近くの男子学生が一斉に北原秀次に向かって礼をし、とても恭しい態度だった。

北原秀次は鼻を掻きながら、頭を下げて礼を返した。「こんにちは！」

突然の展開に、まるでヤクザの親分のような雰囲気になり、少し戸惑った——その中の二、三人は見覚えがあった。以前雪里が彼に決闘を申し込んだ時に連れてきた猿、鶏、犬というおバカな三人組で、かなり印象に残っていた。

雪里は手を振り、北原秀次に向かって嬉しそうに言った。「彼らに礼を返す必要はないわ。みんな私の子分よ！」そう言いながら、当然のように北原秀次を引っ張って毛布の上に座らせた。まるでこれらの男子学生たちが彼女のために先に場所取りに来ていたかのように。

猿たちも特に異議はなく、雪里と北原秀次にフルーツを差し出し、猿はさらに恭しく尋ねた。「姉さん、お兄さんとデート中ですか？」

雪里は驚いて、北原秀次の方を向いて尋ねた。「私たち、デート中なの？」

北原秀次は思わず笑った。「もちろん違うよ」家族で来ているのにデートなわけがない。それに彼と雪里はカップルでもないのだから。

雪里はすぐに猿の方を向いて言った。「デートじゃないわ！そうそう、どうしてそんなことを聞くの？」

猿はすぐに目を輝かせた。「雑誌に載ってたんです。姉さんと北原お兄さんは剣道の天才CPだって！あ、玉竜旗での優勝おめでとうございます。さすが私たちの雪里抜刀隊の総長です！姉さんは四十人を連続で倒し、北原お兄さんは四十五人を連続で倒すなんて、すごすぎます」

彼らはとっくに祝いに行きたかったのだが、冬美を恐れて行けなかった——単に冬美に叱られるのを恐れていただけでなく、総長が家中を追い回されることを心配していたのだ。

雪里は大笑いした。「見てくれたのね。私もみんなに広めたかったのに、お姉ちゃんが遊びに行くのを禁止してたの！」

北原秀次は呆れて彼女を一瞥した。それを気にしているの？雑誌のデマの方が重要じゃないの？説明しようとした矢先、猿は彼の方を向き、正座して頭を下げ、誠実に言った。「北原お兄さん、あなたの勇気は私たちの姉さんにふさわしい。これからは姉さんをよろしくお願いします！」

後ろの二十人近くの若い男子学生たちも一斉に正座して頭を下げ、大声で叫んだ。「よろしくお願いします！」

みな若いとはいえ、大勢いることで迫力があり、不良グループの熱血的な雰囲気を醸し出していた。

北原秀次は何と言っていいか分からなくなった。雪里がこの地域で子分たちを率いて威張り散らしているのは知っていたが、こんなに慕われているとは思わなかった——以前、雪里は彼のためにこの集団を連れて不良たちと喧嘩をしようとしたことさえあったのだ！

今、雪里に対してそういう気持ちはないと直接言うのは少し傷つけることになりそうだ！雪里の面目も潰してしまう。

雪里はとても純粋だから、なおさら彼女を悲しませたくない。でも説明しないと、将来誤解されたまま雪里に責任を取らなければならなくなったらどうすればいいのだろう？