第171章 良い夫の素質

北原秀次は鈴木希がここで待っているとは思わなかった。彼女の体調を確認しながら、不機嫌そうに言った。「私はあなたの命の恩人だぞ!」

転生のことは墓場まで持っていくつもりだった。陽子にも話していないのに、まして病弱な鈴木なんかには——他の転生者も話していないはずだ。今では王莽も達芬奇も転生者のように見えてきた。

君密ならざれば其の国を失い、臣密ならざれば其の身を失う。秘密を守れなければ、八割方は他人の目には異物と映るだろう。だから永遠に自分一人だけが知っているのが一番いい。

鈴木希は暗闇の中で目が輝いたように見え、期待を込めて笑って言った。「私の命の恩人?これが噂の英雄が美女を救うってやつですね?普通なら、恩返しの方法がないので、身を捧げるしかないんでしょう?それに私には大金もありますから、人もお金も手に入れられますよ」

北原秀次は確認してみると、鈴木希の心拍は基本的に正常に戻っていた。彼女が持ち歩いている特効薬がかなり効果的で、症状にぴったりのようだった。しかし冷たい声で言った。「そんな冗談は言うな。女性は特に慎み深くあるべきだ。それに君は美人とは言えない」

鈴木希は厚かましいほど堂々として笑って言った。「私は絶対に美人です。日本の美人の基準を全て満たしています。きれいで、スタイルも良くて、性格も特別いいんです」

「それは病的だな」血色の悪い顔に、細い腕に細い腰に細い足。美しさやスタイルの良さは健康が前提だ。これでは病人としか言えない。性格が良いなんてもっとありえない、嘘つきだ。

「じゃあ病弱美人ということで」鈴木希は意外と話が分かる様子で、さらに誘うように言った。「普通の展開通りにしてみませんか...私と結婚すれば良いことばかりですよ。私は賢くて、きれいで、思いやりがあって、とてもお金持ち。私と結婚すれば、すぐに次期火土会の予備会長になれます。それに私はすぐに死ぬでしょうから、出世と金と妻の死、三つとも10年以内に手に入りますよ。どうですか、興味ありませんか?」

北原秀次は鈴木希を背負いながら、口論する気もなく、きっぱりと答えた。「興味ないね。他の不運な人を探して騙せばいい」