第173話 これは陽謀である

鈴木希が話しながら北原秀次の腕に手を伸ばそうとしましたが、北原秀次は再び身をかわし、眉をひそめて言いました。「ここは学校だ。」

風紀委員会を飾りものだと思っているのか？雪里のような二哈派でさえ、学校でこんなことをする度胸はないぞ！

鈴木希は笑みを浮かべながら言いました。「秀次って堅いのね。じゃあ、食事に連れて行って？食堂で食べたことないから、味はどうなのかしら...」

式島律はようやく状況を理解し、鈴木希を不安げに見つめ、なぜ彼女が北原秀次とこれほど親密なのか分かりませんでした。鈴木希のことは知っていました。学期開始式で紹介があり、国家IQテストで160という天才少女は有名でしたが、私立大福学園がどこからか彼女を引き抜いてきたのかは分かりませんでした。

内田雄馬は顔をしかめながら挨拶し、頭を下げて言いました。「コーチ、こんにちは。」彼は少し後ろめたい気持ちでした。この数日間、野球部全員への虐待について鈴木希の悪口を言いふらしていたので、三日間来なかったのは天罰かもしれないと思ったのです。

陰で散々悪口を言って気持ちよかったものの、もし鈴木希に仕返しされたら最悪です。

この二人は鈴木希のことを知っており、彼女の家族が大福工業集団本部の幹部で、かなりの権力を持っていると疑っていましたが、この学校が鈴木希のものだとは思いもしませんでした。鈴木希は偽名を使い、履歴書を偽造して入学していたのです。本名は鈴木梨衣で、理事長でさえ彼女を鈴木家の遠い親戚だと思っていましたが、会長の寵愛を受けていたため、便宜を図られ、直接野球部を任されたのでした。

どうせ一回戦で敗退する弱小クラブなのだから、これ以上悪くなりようがない。大会長の前で自分の名前を出してもらえるだけでも大きな得だと考えたのです。

式島律は内田雄馬とは違い、鈴木希をそれほど恐れてはいませんでした。躊躇いながら左右を見回して尋ねました。「北原君、鈴木さんとは...」

鈴木希が口を開いて笑いながら答えようとしましたが、またも常軌を逸した発言になりそうだったので、北原秀次は急いで遮って言いました。「阿律、事情は内田から聞いてくれ！君たちは先に食堂に行っていて、僕は鈴木さんと少し話があるんだ。」