第263話 心が一番安らぐ

大蔵村は辺鄙な場所にあり、情報が比較的閉ざされていた。北原秀次と雪里が4ヶ月前に高校剣道界で話題を呼び、ある程度の知名度を得ていたとしても、この地の人々はまだ何も知らなかった——町には高校すらなく、高校に通うには市内まで行かなければならなかった。

時間が短すぎることもあり、この地域の情報受容レベルが低く、北原秀次の受賞についてはまだ広まっていなかった。一般的に、貧しい地域ほど情報を得るのに時間がかかり、1、2年経ってから、突然この地域から玉龍旗で記録的な勇戦賞を獲得した者が出たことに気づくかもしれない——さらに重要なのは、ここで元の彼を知る人々が、雑誌で今の北原秀次を一瞬見かけたとしても、かつて一度も喧嘩をしたことがなく、いつも一方的にいじめられていた弱々しい少年と結びつけるのは難しいということだった。

母親の北原一花でさえ、いつも憂いに満ちた表情をしていた息子が、竹刀を持ち、胴着を着て、汗臭い体で玉龍旗のチャンピオンを必死に争うなんて想像できなかった。

北原秀次はバッグから証書と分厚い白い封筒を取り出し、静かに北原一花の前に差し出して、小声で言った:「これは私が持ち帰ったプレゼントです。」

彼は玉龍旗団体戦で優勝したが、自分の手元には何も残っていなかった。

玉龍大旗とトロフィーは学校のものとなり、名誉室に収められ、金メダルは陽子に贈られて大切なコレクションとなり、勇戦賞の賞状は式島葉が持ち去り、剣道部の壁に掲げられて後進の励みとなっていた。最後に、彼の手元には賞状と学校からの奨学金だけが残った。

彼は今、この証書と奨学金を元の彼の両親に贈った。元の彼が得たものとして、きっと両親は喜んでくれるだろう。

北原一花は証書を手に取って開いて見、さらに分厚い白い封筒を開けると、中には薄い黄色の一万円札の束があり、驚いて左右を見比べ、これが本当なのか信じられない様子だった。

北原秀次は優しく説明した:「お金は試合に勝って学校からもらった奨学金です。剣術については...福沢先生が小野一刀流の剣術を教えてくれて、そして雪里さんと冬美さんも一緒に試合に参加しました。冬美さんは女子部門団体戦で優勝し、雪里さんは女子部門団体戦優勝の他に、同じく勇戦賞も獲得しました。」