第300章 これは本当に難問だ_1

聖人が言った通り、「朝に道を知り、夕方に死ねばよい」という。

より優れた酒造りの技術が目の前にあるとなれば、安芸英助が魅了されないはずがない。しかし技術は簡単に伝授されるものではない。彼はどう考えても、北原秀次が手間ひまかけて研究した秘密の技を簡単に教えるはずがないと感じていた。一般的な酒造りでは、最初に三年間、米の持ち込みから洗米までを一通りこなし、次に少しずつ専門技術を身につける。そして十年や八年働いた後でようやく信頼を得て、核心的な工程の操作方法を理解できる。

加えて、この技術には大規模な利益が絡んでいる。

安芸英助の清酒産業に対する理解からすると、北原秀次が酒を出品すれば、その後純味屋の大門は、酒造りのオーナーらによって突撃されることだろう。

誰もが自家製の酒を一番のものにしたいと思う。そして酒造りが成功すれば、評判になり、大利益を得られる。歴史を見れば、「禁酒令」が出されることが多くても、密造の酒が絶えない。

人類の歴史上、この巨利を追い求めて命を奪われた者は最低でも数万人はいるだろう。

そして、この大きな利益を求めるためだけでなく、酒を造る人ならば、北原秀次の酒造りのプロセスや自分のものと何が違うのかを必然的に知りたいと思うだろう。また、彼が使っている新しい酒母を試したいと思うだろうし、酒蔵の土を掘り出して細かく検査したいとすら思うだろう。

このような状況下で、安芸英助は最初の要求が失敗した後、必死に頼み込んだり厄介になったりしても意味がないと感じた。そして、北原秀次を買収しようとしたが…純味屋の繁盛ぶりを見れば、自分にそんな資本があるとは思えなかった。そのため、知人を通じて導入することを望むしかなかった。北原秀次が直接自分に酵母を渡してくれることを期待するのは厚かましいが、醸造の過程を傍観させ、彼自身がアドバイスを与えてくれればそれは非常に良い。

もし彼の酒造りのアドバイザーになれば、一挙に"雪見冬蔵"の品質を頂点まで押し上げ、それは最高だろう。品質が確立されれば、以前の悪名も気にせずに済む。

良い酒が深い巷に怖がられるなんて、恐れるのは良い酒ではない。酒好きの力は無尽蔵で、本当に良い酒が深い巷にあれば、彼らは巷を平らにするだろう。