第211話 わっ！ゴールデンレジェンド！
ケーブルが切れると、エレベーターは3階を通り過ぎて落下し、安全ブレーキが作動して鋭い摩擦音と火花が散るも、下降する慣性を抑えることはできなかった。
千瘡百孔のエレベーターは依然として下降を続けていた。
しかし槐詩は無言のうちに悪寒を感じ、急に振り返ると、歪んだエレベーターの壁にいつの間にか大きな穴が開いているのを目にした。
細身の人影が槐詩めがけて空中から飛び降りてきた。
指が虚空を下向きに切り裂く。
その一本の指の前で、壁も、ケーブルも、エレベーターの外殻も、すべてが両側に分かれていった。暴力的な破壊というよりも、まるでドアを開くかのように、簡単に。
その人影が何の妨げもなく飛び込んでくる……
第三レベルのピーク！
紛れもない第三レベルのピーク！
槐詩が感じたのは、社会保障局の刑務所にいた悪夢よりもさらに厄介な悪寒だった！
長い間潜伏し、槐詩の底を見極めた後、その人物は突如として攻撃を仕掛け、あらゆる障害を突き破って、槐詩の急所を狙った。
そして、彼女は槐詩の黒いヘルメットの下で突如として輝き始めた幽火の双眼を目にした。
劫灰と心の毒で構成された漆黒の悪夢の霧が潮のように立ち上り、飛び込んできた女に向かって渦を巻いた。
何だこれは？
その女は一瞬戸惑ったが、指を下ろす動きは止めず、無形の力で恐怖のオーラの霧を強制的に分断した。しかし両側に渦巻く霧の後ろから、輝かしい十字のガンブレードが轟音とともに襲いかかってきた！
悲しみの槍が轟き、ドラゴンの咆哮を放ち、ガンブレードは原質の注入により、炎のような輝きを放った！
瞬時の対応に、槐詩は全力を尽くした。
しかし空中で、その女の姿が突如として水紋のような波紋を立て、槐詩の目の前が突然かすみ、突きが空を切った？
そして波紋が消えると、その女は槐詩の一瞬の戸惑いに乗じて突きを避けていた。
これは……幻術？
気づいた時には、その女は態勢を立て直して槐詩に攻めかかってきたが、槐詩は冷笑し、ガンブレードを震わせてドラゴンブラッドを飛ばし、それが彼女の顔にかかると、数十の細い編み込みになった髪の毛が一瞬で青白くなった。
力が消散する。
「運命を共にしようじゃないか！」
槐詩は咆哮し、手を振り上げて手榴弾を投げた。
このような狭い空間では、逃げ場所など全くない……その女は急に表情を変え、素早く後退した。彼女の後ろのエレベーターは、彼女の後退に合わせて、彼女が通れる隙間を開け、彼女が去った瞬間に即座に閉じた。
最後の瞬間に、槐詩の手榴弾が爆発した。
濃い煙と数個の火花を上げた。
地面に落ち、四つに割れて、すぐに原質となって消えた。
騙された！
女は一瞬呆然とし、閉じたエレベーターの向こうで、その人影が自分に別れを告げる手振りをするのを見た。
エレベーターは落下する。
もう追いつくことはできない。
1階、到着。
槐詩の傍らで、その暗金色の宝箱が完全に実体化し、少年は躊躇なく手を伸ばして押すと、まばゆい金色の光が天に向かって立ち上った。
「わあ！ゴールデンレジェンド！！！」
豪快な声が四方八方に響き渡った。
宝箱が開く。
しかし槐詩が中身を確認する間もなく、死の予感が再び爆発し、彼を地面に伏せさせた。
続いて、轟音とともに、まだ開いていないエレベータードアが粉々に砕け、大きな穴が開いた。直後、熱を帯びた弾丸が槐詩のヘルメットをかすめ、エレベーター内の空間を貫通し、すでにドアのない向こう側へと飛び出し、広々としたホールの柱に当たり、マグカップほどの大きさの裂け目を作った。
瞬時に頭を上げた槐詩は、弾丸が開けた穴の向こう、ホールには誰もおらず、粉々に砕けた強化ガラスのドアを通して、数百メートル先の道路上に、痩せた人影がしゃがみ込んでいるのを見た。
その手には淡い金色に輝く細長い銃器が、槐詩のいるエレベーターを正確に狙っていた。
スナイパー？！
このゲーム始まってどれだけ経ったんだ、もう8倍鏡と98Kを拾った奴がいるのか？
槐詩は手を伸ばし、地面を叩くと悪夢の霧が立ち上がり、彼の姿を隠した。そして、宝箱の中身を掴み取った——なんと重い腕甲と……分厚い説明書？
くそが説明書だと！
彼は読む時間もなく、説明書を運命の書の中に押し込み、原質の力で強制的に読み取らせながら、腕甲を抱えてエレベータードアの外へと疾走した。上階の不気味な女が追いかけてくるのを恐れて。
疾走する中、彼は意識的にスナイパーの照準を避け、柱の陰に身を隠しながら、あと少しでホールのフロント裏口から逃げ出せるところまで来ていた。
しかしその直後、彼は体が激しく震えるのを感じ、胸の前に大きな穴が開いた。
プラズマが飛び散る。
重傷！
そしてその後、銃声が突如として響き渡った。
撃たれた？
槐詩は信じられない思いで振り返り、ホールの柱が並ぶのを見た。確かに障害物の陰に隠れていたはずなのに、弾丸はどうやって自分に命中したのか？
まさか伝説のトリガーを引く時に少し揺らすと弾丸が曲がる銃術？
これはあまりにも道理に合わなさすぎるだろう？
彼の足元で、石の破片が飛び散り、槐詩の顔に当たって、彼は顔を下げ、足元近くの弾丸が作った裂け目を見た。
そして、弾丸に撃たれた自分の影……
含沙射影。
——東夏系列の3階段の聖痕・蜮！
こんなのありかよ？
槐詩は突然地面に膝をつき、激しく喘ぎながら、近づいてくる足音を聞いた。あの女が追いついてきた……
もう逃げ場はない。
.
「姉さん、早く！あいつはもう私の攻撃を受けたわ」
原質のリンクを通じて焦った声が届いた：「逃がすな！」
「了解！」
2階で、フロアを突き破って追いかけてきた葉雪涯は興奮で拳を握りしめた：「ロクシン、よくやった！」
続いて、最後の層のフロアが彼女の指の下で両側に分かれ、彼女は空から降り立ち、ホールに着地すると、興奮して前方を見上げた。
そして、その場で固まった。
人はどこに？
地面の鮮血の跡をたどって見上げると、途中で血痕が途切れており、空っぽのホールには人影一つ見当たらなかった。
すぐに、葉雪涯の視線はホールの奥、受付にある巨大なテーブルに固定された。
「ここに隠れているのか？」
彼女は手を振り、突然飛び出したが、空振りに終わった。
テーブルの後ろには何もなく、ゴーストの影さえなかった。
死んだ静けさの中、葉雪涯は周りを見回し、途方に暮れた。
人はどこに？
どこへ行った？
目に入るのは、分かれたテーブル、二つの椅子、そしてホールの左側にある数脚のソファ、二鉢の枯れかけた緑植物だけだった。
人影は全くない！
「逃げた？」
葉雪涯は諦めきれずにホール全体を探し回り、床のタイルまで数枚剥がしてみたが、人が隠れられそうな場所が全くないことを確認すると、冷ややかに鼻を鳴らして立ち去った。
足音が遠ざかるにつれ、散らかり放題のホールは死の静けさを取り戻した。
数人の明らかに遅れてきた昇華者たちが諦めきれずに何度も上階を探し回った後、しょんぼりと去っていった……
長い時間が過ぎ去った。
ライブルームのカメラまでもネタ切れで撤収した後、一つの人影が突然空気から浮かび上がった。
それは先ほど去ったはずの葉雪涯だった。
彼女は疑わしげに周りを見回し、眉をひそめた：「本当に逃げたのか？」
しかし周囲に潜む'軍団'は重傷を負った昇華者を見つけることができなかった。
あのダークゴールド装備は隠身や逃走を助けるものだったのだろうか？
30分を無駄にした後、もはやここで待ち伏せしている時間はなく、彼女は最後にもう一度疑わしげに周りを見回し、心の中の奇妙な感覚を抑えながら、立ち去った。
さらに30分が経過。
遠くから豪快な叫び声が聞こえた：「わっ！ゴールデンレジェンド！！！」
ホールはまだ静かで、隅にある緑植物が試すように一度震えただけだった。
静けさの中、場外の視聴者たちの驚きの声以外に、何の異常もなかった。
緑植物がもう一度震えた。
依然として何の異常もなかった……
葉雪涯という女が完全に去ったことを確認してから、緑植物の幻影が突然消え、壁の隅でほとんど死にかけていた槐詩の姿が現れた。
「マーヤ、息が詰まりそうだった……」
彼はその腕甲を身につけたまま、地面を這いながら別の緑植物の側まで移動し、ヘルメットを脱いで大きく二度深呼吸すると、顔色が目に見えて良くなった。
しかし胸の大穴はまだ塞がっていなかった。
手を上げ、さらに二本の銀血薬剤を注ぎ込むと、ようやく一応の回復を見せた。彼は手首に力を入れ、体を起こして壁に寄りかかり、まだ余韻が残っていた。
世の中のヒーローを甘く見すぎていた、油断して、スポーン地点で死にかけた……
しかしこれは間違いなく価値があった。
この一連の争いで、間違いなく彼が勝利を収めた！
槐詩は腕を上げ、腕に着けた奇妙なデザインの腕甲を眺めながら、楽しげな表情を抑えられなかった。
17個のダークゴールド装備の一つが、手に入った！
まさに最後の瞬間に、槐詩は説明書を急いで読み終え、それを使って自分の命を救ったのだ。
先ほどの一閃で数十人の昇華者を倒したダークゴールド装備ほど恐ろしくはないが、その力は依然として十分に奇妙だった。
'幻想の腕甲'。
——正式名称は'コイン式ポータブル全景シミュレータ'。
そう、コインを入れる必要があった。一体どこからこんな奇妙な設定が来たのか。
説明書によると、死亡した選手が残した金の小判を投入すれば、自分の外見を腕甲が触れた任意の物体に完璧に偽装することができる。
単独で、他のものと精密な関係を持たないものであれば、何でも可能だ。
見かけだけとはいえ、外見に関する限り、見破られる可能性は皆無だ。使用者の体さえも相応に拡大縮小され、一切の破綻がない。
いかなる聖痕も、いかなる武装も、接触しない限りその幻影を見破ることはできない。
待ち伏せ、奇襲、潜入偽装に最適な選択肢だ！
費用は一回につき金の小判一枚で、時間制限なし。
忍耐があれば、永遠に待ち続けることも可能だ。
さらにもう一つ、'完全ミミック'モードと呼ばれる機能があり、10分間、金の小判三枚を消費して、この装備の半径5メートル以内に現れた任意の人物に使用者を偽装する。
完璧な模倣。
深い思考の中で、槐詩は手に入れたばかりの装備を撫でながら、口元にゆっくりといたずらっぽい笑みを浮かべた。
しかしすぐに、再び顔色が青ざめ、ワッと一口の血を吐き出した。
「だめだ、まずは休んで、もっと薬を飲まないと……」
彼は周りの緑植物を見回したが、まだ足りない。
1分後、小さな石の破片が静かにホールの廃墟から滑り出し、道路の縁石の上をピョンピョン跳ねながら、公園の方向へと向かっていった。