秦の父親は周りの噂を感じ取っていた。この事はもう隠しきれないので、正直に打ち明けた方がいいと思った。
この言葉を聞いて、長袍の老人の瞳に興味の色が浮かび、秦正陽を見つめながら言った。「私の弟子として、女さえも守れないとは。」
「師匠、私は...」
秦正陽は心の中で悔しさを感じていた。今すぐにでも葉辰を殺してやりたかった!
長袍の老人は手を振りながら言った。「言い訳は要らない。本来なら私が手を下してこの小僧を斬り殺すつもりだったが、今となっては、お前が自ら手を下した方がいい。私が彼を殺せば確かに問題は解決するが、お前の道心が傷ついた事実は変わらない。」
「お前自身が斬り殺してこそ、大きな得るものがあるだろう。」
「それに、この間私と修行を重ね、稀世の武技も教えたのだから、その成果を見せてもらおうではないか!」
秦正陽は立ち上がり、真剣な面持ちで言った。「はい、師匠!必ずこの小僧の首を自らの手で刎ねてみせます!」
秦正陽が立ち去ろうとした時、長袍の老人が声をかけた。「待て。」
すると、空を切る音が響いた。
秦正陽は手を伸ばして開くと、すぐに掌の上に一粒の丹薬が置かれているのに気付いた。
長袍の老人は淡々と言った。「この丹薬でお前の実力を少し上げることができる。師の期待を裏切るなよ!」
「はい、師匠!」
秦正陽は丹薬を握りしめ、葉辰と夏若雪の方へ向かった。
空気は極限まで張り詰めていた。
殺気は極限まで高まっていた!
戦いは、一触即発の状態だった。
秦正陽は足を止め、冷たい眼差しで夏若雪を見つめ、言った。「売女め、私が以前お前に与えた教訓を忘れたのか!」
「警告したはずだ。お前は私、秦正陽の女だ。誰にも触れる資格はない、誰にもだ!」
「最後のチャンスをやる。そいつの手を離し、私と結婚しろ。そして江南省の全ての人々の前で私がお前を離縁してやる!さもなければお前の両親の命はない!お前の命もない!」
「この小僧がお前の後ろに立っているからといって、我が秦家が手も足も出ないと思うな!今日、お前たち犬男女に何が卑小かを思い知らせてやる!」
最後の言葉は、秦正陽が怒鳴り声で叫んだ!
秦正陽は言い終わると、すぐに長袍の老人から貰った丹薬を飲み込んだ!彼は葉辰を圧倒したかった!
師匠の前で自分の才能と実力を見せつけたかった!