「まさか寝たふりをしていたの?」葉辰が言った。
夏若雪は美しい大きな瞳をまばたきさせ、白い頬が赤く染まりながら、にっこりと笑って言った。「寝たふりなんてしてないわ。あなたが抱き上げた時に目が覚めただけよ」
葉辰は夏若雪を柔らかいベッドに寝かせた。「ゆっくり休んで」
彼が立ち去ろうとした時、夏若雪は蓮根のように白い腕を葉辰の体に巻き付けた。
……
その夜は何事もなく過ぎた。
翌日、葉辰は早起きして、二人の女性が目覚める前に階下で粥を作り始めた。
これは普通の粥ではなかった。昨日、薬王谷から手に入れた薬材を使って作る粥は、二人の体に大きな効果があるはずだった。
修行の進度さえも飛躍的に上がるはずだ。
すぐに、別荘全体が心地よい香りに包まれた。夏若雪と孫怡はその香りで目を覚まし、キッチンで忙しそうにしている葉辰を見て、天才だと感嘆した。
「葉辰くん、この粥はあなたが作ったの?すごくいい香りね……」
「香りだけじゃないよ。食べてみればわかる」
二人は急いで粥を一杯ずつ取り分けて食べ始めた。
碗の中には無数の霊気が渦巻いていた!
飲み込むと、全身の隅々まで力が満ちていくのを感じた!
この感覚は最高だった!
この瞬間、二人は作法など気にせず、がつがつと食べ始めた。
葉辰は二人を見つめながら、目に笑みを浮かべた。
しかし、その笑顔はすぐに真剣な表情に変わった。輪廻墓地がまた震動したのだ!
「小僧、入れ」
冷たい声が響いた。
葉辰は一瞬驚いたが、すぐに言い訳を考えて、別荘の三階へと向かった。
部屋のドアを閉め、黒い石を取り出すと、瞬時に輪廻墓地の中に入った。
黒衣の老人がすでに葉辰の前に現れていた。
葉辰は黒衣の老人の気配が少し弱くなっているのに気付いた。
もしかして薬王谷の件が原因だろうか?
そのとき、黒衣の老人が口を開いた。「昨日私に約束したことを覚えているか?」
葉辰はもちろん覚えていた。昨日、老人の力を借りて項承東の体の術法を破ったが、その代わりに老人の一つの条件を受け入れなければならなかった。
当時の葉辰はあまり深く考えなかった。上古時代の大人物が、彼に何か大したことをさせるはずがないと思っていた。
「覚えています」