第611章 身分!(5番目)

松山村。

荒れ果てた狭い土壁の家。

薄暗い灯りの下には古びた家具ばかり。

物が山積みで、少し息苦しい雰囲気。

そして今、気を失った叶晨が静かにソファーに横たわっていた。

ソファーはかなり古びていた。

叶晨を家に連れ帰った少女は台所で料理をしており、できあがると寝たきりの父親の前に運び、一口一口丁寧に食べさせた。

父親の様子を見て、少し胸が痛んだ。

三年前まで、彼女には幸せな家庭があった。

裕福とは言えないが、それなりに暮らしていけた。

しかし不運にも、父親が江南省のある建設会社で働いていた時、誤って高所から転落してしまった。

命は取り留めたものの、全身麻痺で寝たきりとなってしまった。

母親はプレッシャーに耐えきれず、一ヶ月後に出て行った。

行方は分からない。

祖父と二人きりで助け合って生きていくしかなかった。

幼い肩に重圧と責任を背負うことになった。

壁の時計を見ると、祖父はまだ帰っていない。まだ外で露店を出して、何とか家計の足しにしているのだろう。

露店の収入が家の唯一の収入源となっていた。

少女は全てを済ませると、気を失った叶晨に視線を向けた。

父親と同じような状態に見えなかったら、親切心で連れ帰ることもなかっただろう。

先ほど村の漢方医に診てもらったが、その結果は思わず笑ってしまうようなものだった。

この男性には何の問題もなく、むしろ体の状態は異常なほど良好で、今は単に眠っているだけだという。

彼女は長いため息をつき、つぶやいた。「まだ目覚めないなんて...もしかして伝説の睡眠症?」

言い終わらないうちに、突然、ソファーの上の男性が目を開いた!

冷たい殺気が放たれる!

まるで威圧が降りかかるかのよう!

部屋全体の空気が凍りついた!

少女は明らかに驚いて、尻もちをつき、体が震え始めた。

叶晨は完全に目覚め、目の前の光景を見て、殺気を収めた。

「なぜ私はここに?」

叶晨は目を閉じ、しばらく考え、気を失った後の記憶が一瞬で蘇った。

「なるほど」

実は、数時間で目覚められたはずが、この少女に連れ帰られてしまったのだ。

どうあれ、これも少女の善意だ。彼は心の中で感謝していた。

その後、叶晨は床に座っている少女に目を向け、微笑んで立ち上がり、少女を助け起こした。