第637章 嘆き（1更！）

葉辰の瞳は、なぜか潤んでいた。

彼は必死に我に返り、目の前の石震海を見つめ、微笑んで言った。「石おじさん、私は辰です。石三はどこにいますか？会わせてください。まだ何度か酒を奢らないといけないんです。」

確実な答えを得る前に、葉辰は余計な推測を避けていた。

石震海は葉辰の言葉を聞くと、瞳が暗くなり、目に涙を浮かべ、老いた手が微かに震えた。

「辰よ、石三は...もういないんだ。」

「穏やかに逝ったんだ。もう安らかに眠らせてやろう。今回、私が医神門に来たのは、彼の遺品を取りに来たんだ。あの世に送ってやりたくてね。」

その言葉を聞いた瞬間、葉辰の体は凍りついた。

無形の気が四方に漏れ出した！

石三が死ぬはずがない！

絶対にありえない！

石三は石震海の三番目の息子だった。

上の二人の息子は崑崙虚で命を落とした。

石震海は石三を同じ運命から守るため、医神門に入門させた。

医道の道を極めることは、武道の頂点を目指すよりも安全だと考えたからだ。

葉辰が崑崙虚で過ごした5年間、石三と共に幾度となく死地をくぐり抜けてきた。

当時の葉辰は修練を完全に始めていなかったため、生き延びることすら困難だった。石三がいなければ、とうに野獣の餌食になっていただろう。

最も印象に残っているのは、石三が葉辰を守るために剣を受け、腕を失ったことだった！

長老が術法で石三の腕を再生させたものの、永久的な後遺症が残った。

これは医道でも消し去ることのできないものだった。

葉辰は密かに誓っていた。いつか強くなって戻ってきたら、石三の恩に報いると。

医神門での日々を思い返すと、石三のあの純朴な笑顔が昨日のことのように思い出された！

「辰よ、俺は一生大それた野望なんてないんだ。ただ嫁さんをもらって、のんびり暮らしたいだけさ。」

「崑崙虚は広すぎる。広すぎて俺なんて取るに足らない存在だ。医神門に入ったのは、無上の医道を極めるためさ。そうすれば崑崙虚で人々を救うことができる。それだけでも大きな仕事になるだろう。」