賀騰の黒袍に隠された瞳が、冷たく常莽を見つめた。
「お前のことは前から気に入らなかった」と賀騰は冷たく言った。
常莽は大声で叫んだ。「そうか!俺もお前のことが前から気に入らなかったぞ!」
常莽は全身に気炎を漲らせ、賀騰が言葉を発する前に拳を握って突っ込んでいった!
賀騰は冷たく鼻を鳴らし、両手を上げると、彼の周りを取り巻くエネルギーが二つに分かれた!
この二つのエネルギーは、それぞれ秦玉と常莽に向かって迫っていった!
常莽は少しも恐れることなく、赤い光を握りしめ、正面から立ち向かっていった!
しかしその時、常莽の目の前に突然一つの人の顔が浮かび上がった!
その顔は慈愛に満ちた中年の女性で、その目には深い愛情が宿っていた。
「母さん...母さん!」その中年女性を見た常莽は、思わず声を上げて叫んだ!
黒色エネルギーは素早く利刃と化し、常莽の体内に激しく突き刺さった!
常莽は聖体であったが、その力は不気味なほど強く、彼の肉身を直接貫いた!
「母さん...母さん...」常莽は体の痛みも忘れ、涙を流しながら泣き続けた!
「はっはっはっは!」賀騰は再び大声で笑い出した。
「やはり、お前たち下層の者には弱点があるものだな!」
秦玉は表情を曇らせた。常莽もこのエネルギーに惑わされてしまったことを悟った。
彼は急いで常莽の前に行き、彼を支え起こした。
「常莽、あれは偽物だ、あれはお前の母親ではない!」秦玉は大声で叫んだ。
しかし常莽には全く聞こえていないようで、虚ろな目で「母さん」という言葉を繰り返すばかりだった。
秦玉は眉をひそめた。常莽を目覚めさせるのは、そう簡単ではなさそうだった。
遠くでは、顔錦尭たちも眉をひそめていた。
「神識を専門に攻撃する術だな。これは渡劫の環境に匹敵するほどだ」と顔錦尭は驚きを隠せない様子で言った。
「はっは、この二人は肉身が強靭なのに、この賀騰は神識を刃として使うとはな!面白い!」
皆は賀騰の手法に、驚きの色を隠せなかった。
秦玉は立ち上がり、冷たく賀騰を見つめた。
賀騰は薄く笑いながら言った。「秦玉よ、次はお前の番だ。お前が再び私の術法に陥ったとき、誰がお前を救えるというのだ?」
秦玉は黙ったまま、冷たく言った。「この術法を頼りに無敵だと思っているのか?」