秘境に足を踏み入れた瞬間、周囲の環境は一変した。
数人が同時に足を踏み入れると、入り口はすぐに閉じ始めた。
秦玉は周囲を見渡し、この所謂秘境は外と大きな違いがないことに気付いた。
しかし、この秘境の中の霊気は、確かにより豊かであった。
それ以外にも、この秘境の中で、秦玉は古めかしい雰囲気を感じ取ることができた。
明らかに、この秘境は長年存在していたのだ。
「秦さん、どうですか?」寧坤は笑いながら言った。
秦玉は軽く頷いて言った。「想像していたのとは少し違いますね。」
「案内しましょう。」寧坤は言った。
その後、寧坤が先導して、この秘境の中を散策し始めた。
この秘境は大きくはないが、空間は非常に安定しており、崩壊する可能性はほとんどなかった。
秘境の中には、何年も前から残されている純粋な霊気の他に、少し異なる気配も残されていた。
この気配は非常に不思議で、三清古樹がもたらす感覚に似ていた。
この霊気の環境の下で、秘境全体の景観は極めて美しかった。
山清く水秀でる環境は、思わず人々の憧れを誘った。
「洪一門には凄い人物がいるものですね、こんな空間を作り出せるなんて。」秦玉は心から感嘆した。
自分で空間を開くなんて、それはどれほどの技なのだろうか!
「秦さん、私たちを買いかぶりすぎです。」この時、寧坤は首を振った。
彼は笑って言った。「このような秘境は私たちには作れません。これは全て先人が残したものに過ぎません。」
秦玉は考えて、それもそうだと思った。
このように安定した空間は、おそらく大能の境の者でなければ作れないだろう。
洪一門に大能がいれば、官側を恐れる必要はないはずだ。
一周り回った後、寧坤は秦玉をある別荘に案内した。
「秦さん、しばらくここにお住まいください。」寧坤は言った。
秦玉は首を振って言った。「結構です。用事がありますので、長くは滞在できません。今日中に出発しなければなりません。本題に入りましょう。」
寧坤は少し驚いて言った。「そんなに急いでいるんですか?まあ、いいでしょう。秦さん、こちらへどうぞ。」
彼らは大広間へと向かった。
大広間には、十数人が正座していた。
この十数人は皆、不機嫌そうな表情で、かすかな殺気を漂わせていた。
「お前が秦玉か?」その時、一人の男が立ち上がった。