第754章 不安な琴ばあや

小黒の怒りに直面しても、秦玉は動じなかった。

彼は冷たい目で琴ばあやを見つめ、言った。「人を雇って私を殺そうとして失敗したから、今度は早めに彼を秘境に連れて行こうとしているのか？老いぼれ、本当に厚かましいな。」

「てめえ、死にてえのか！」小黒は完全に激怒し、大きな手を振り上げ、黒い拳を秦玉に向かって突き出した！

秦玉も負けじと、拳を握りしめて応戦した。

「ドン！」

武道学院内に轟音が響き渡った！

両者とも肉身の力を使っていたが、放たれた気波は庭院全体を破壊しかねないほどだった！

二人は単純な探り合いをしただけだったが、それでも極めて強力な力が込められていた。

小黒は自分の拳を見つめ、眉をしかめた。

彼の黒い拳には、細かな亀裂が入っていた。

怪我は深刻ではなかったものの、驚くべきことだった。

呑天蟒の肉身は極めて強靭で、外側の皮膚は無敵と言われるほどだったのだ。

しかし今、一人の人間と拳を交えて劣勢に立たされるとは、彼には受け入れがたかった。

傍らの琴ばあやの表情も良くなかった。

彼女は冷たい目で秦玉を見つめ、殺気を隠そうともしなかった。

「この畜生め、三日後、必ず奴の命を取りに来る」秦玉は小黒を指差して言った。

その言葉を残し、秦玉は背を向けてその場を去った。

部屋の中で、琴ばあやの表情は一層冷たくなった。

「この秦玉が...」琴ばあやは歯を食いしばり、痩せこけた両手を軽く握りしめた。

小黒は急いで前に出て、言った。「琴ばあや、私は彼に負けません。」

琴ばあやは小黒を一瞥し、言った。「絶対に負けてはいけない、一度たりとも！」

琴ばあやにとって、小黒は単なるペットではなく、彼女の心血を注いだ存在だった。

彼女は小黒を自分の子孫のように思っていた。

だから、どうしても琴ばあやは彼を若い世代の第一人者にしたかった！

それに加えて、小黒が負ければ、秦玉が顔若雪を閉じ込めている秘境に入れることになる！

その秘境は京都武道協会の機密であり、秦玉に手を出させるわけにはいかなかった。

「負けません」小黒は拳を握りしめ、重々しく言った。

琴ばあやは何も言わなかった。

彼女が求めているのは、百パーセントの確実性だった。

「必ず勝たせてみせる」琴ばあやは重々しく言った。

彼女は部屋を出て行き、その目には殺意が宿っていた。