秦玉はその日のうちに薬神閣へ戻った。
琴ばあやの死は、秦玉の心に少なからず不快感を残した。
今の秦玉は殺戮に慣れているとはいえ、母子の情の深さを目の当たりにして、心を動かされずにはいられなかった。
「琴ばあやが死んだが、夏航が正式に彼女の地位を引き継げるかどうかわからない」秦玉は帰り道で心の中で考えていた。
もし夏航が琴ばあやの地位を引き継ぐことができれば、秦玉の行動はより容易になるだろう。
薬神閣に戻ると、皆すでに琴ばあやの死を知っていた。
「お前が殺したのか?」姜和は疑問を持って尋ねた。
秦玉は首を振って言った:「いいえ、京都武道協会の者が殺したのです。」
姜和は言葉を失い、軽くため息をついて言った:「彼らにとって、誰もが駒になりうるということだ。」
秦玉も同じように感じていた。上層部は将棋を指す者のように、姿を見せることなく、大局を操っているのだ。
「今まで出会った者たちは、おそらく彼らの核心的な人物ではないだろう」秦玉は重々しく言った。
真の核心は、おそらくあの数人の上層部だけだろう。
しかし、京都武道協会に一生を捧げた琴ばあやでさえ、上層部の真の姿を見たことがない。
「そうだ」その時、秦玉は何かを思い出したように。
彼は閣主と姜和の二人を見て、言った:「あの縛神術は京都武道協会の蔵経閣に記録されているかもしれないと思わないか?」
二人は顔を見合わせ、重々しく言った:「それは何とも言えないが、たとえ本当に蔵経閣に記録されていたとしても、お前にはそこに入る機会はない。」
「それに、お前は顔若雪を連れ去り、京都武道協会はお前を探している。まさか戻るつもりではないだろう?」
秦玉は冷笑して言った:「すでに数日が経過しているのに、彼らはまだ動きを見せていない。これは彼らが今のところ私をどうこうする気がないということだ。」
「あるいは、彼らには今のところ私をどうこうする力がないということだ。」
閣主は重々しく言った:「彼らはお前の武聖の力が消えるのを待っているのだ。」
「その通りだ」秦玉は頷いた。
「武聖の力を持つ私は、本物の武聖には及ばないが、武聖の下では誰も恐れない。」
「京都武道協会が武聖を派遣できないのなら、私は安全だ。」