閣主は口元の血を拭い、首を振って言った。「何でもない」
秦玉が口を開こうとした時、摘星が再び戻ってきた。
摘星を見て、秦玉と閣主の顔色が慌てた様子になった。
「摘星様、あなたは...」閣主の目には困惑と緊張が満ちていた。
摘星は閣主を無視し、冷たい目で秦玉を見つめて言った。「秦玉、今回は命を助けてやるが、次はない」
「第二の秘境で会えば、容赦はしない」
その言葉を残し、摘星は立ち去った。
摘星が本当に去ったことを確認してから、秦玉はようやく安堵の息をついた。
「閣主様、大丈夫ですか」秦玉は閣主を見た。
あの一撃で、彼女の骨が何本も砕けていた。
閣主は首を振って言った。「大丈夫だ」
秦玉は眉をひそめた。
これが彼が初めて目にした武聖の力だった。
彼の前では、秦玉は全く抵抗する力がないと感じた。
この力の差は、秦玉に深い不安を感じさせた。
「上に行きましょう」閣主が言った。
秦玉は頷き、閣主の後に続いて閣主楼の上階に戻った。
上階で、閣主は簡単に傷の手当てをしてから、茶卓に戻った。
「一体何があったんだ?」顔お爺さんが尋ねた。
閣主は事の経緯を顔お爺さんに説明した。
「武聖?」武聖が現れたと聞いて、顔お爺さんの表情も良くなかった。
「ええ、でも心配する必要はありません。彼はもう去りました。しばらくは戻って来ないでしょう」閣主が言った。
顔お爺さんは物思いに沈んだ様子だった。
彼は小声で呟いた。「まさか、世の中がこんなに早く変わるとは」
「そうですね」閣主もうなずいた。
一年前まで、大宗師の頂点が覇を唱えていた。
しかしたった一年で、武聖までもが現れ始めた。
これらすべての原因は、秦玉にあった。
秦玉は武道界の触媒のような存在で、彼の出現により、多くの強者が姿を現し始めた。
そして、進歩を止めた者たちは、時代の波に完全に飲み込まれた。
「顔お爺さん、おっしゃっていた顔家秘境とは、一体どういう意味なのですか?」秦玉が尋ねた。
顔お爺さんは重々しく言った。「お前の父は私に、顔家には眠れる血脈があり、その血脈は私の子孫の中で再び現れると告げた」
「その人物が顔若雪であり、その血脈は顔家秘境から伝承されるものだ」
秦玉は目を見開いた。