クラインの目を見ながらダンは息を吸うと、後ろに寄りかかり、ゆっくりと息を吐き出した。
「確かなのか?」
彼の表情はほとんど変わらなかった。特別申請の準備は早くからできていたようだが、ただこんなに速いとは思っていなかったようだ。
隊長、なんだかホッとして、落ち着いてるように感じるんだが……クラインは自分の笑顔を隠さずにこう言った。
「確かです、隊長。隊長もポーションと完全に一体化した時、特別で、不思議な感覚がして、間違いなく自分が完全にポーションと一体化したとわかったでしょう。」
「特別で、不思議な感覚……」ダンは小さくその言葉を噛みしめ、ゆっくりと眉を寄せた。
あれ、隊長はこれまで2回昇進しているのに、ポーションを完全に消化せずに昇進したのか?まぁ、「演技法」を知らずに、完全に消化するのは難しいか……長い時間をかけて研鑽し、無意識に演じることで暴走のリスクを下げるしかないのだから……可哀想な隊長……クラインは静かにダン・スミスを見つめ、口を開かず、付け加えることもなく、相手が考えるに任せた。
1分近くたってから、ダンの深い灰色の瞳が再びクラインの姿を捉え、彼は考えながら言った。
「あと一年待った方がいいかもしれない。」
隊長は、あと一年待てば、あまり目立たなくなり、デイリーさんを手本にしたという前提のもと、上層部にあまり目をつけられず、せいぜい観察者のリストに入れられる程度だと言いたいのか?クラインは考えて、落ち着いて答えた。
「僕も元々は来年になってから特別申請を出そうと思ってたんです。習得しなければならないことも多いし、例えば、格闘なんかは始めたばかりですから。」
「でも、隊長、この1、2カ月、僕たちには偶然が多過ぎると思いませんか?誘拐犯を追いかけたら、向いの部屋でアンティゴノス家のノートを見つけたり、封印物「2-049」が遅れて配達されて、ルエル・ビーボがティンゲンから逃げられず、埠頭で力を消化しようとし始めたり、僕が行った誕生会で、ハナス・ファンセントの事情を引き出したり、図書館で調査中に、そこでオーロラ会のメンバーに会ったり……」
「これらの偶然が何を意味しているのかはわかりません。ですが、なんだか不安を感じて。それでできる限り自分を高めたいと思ったんです。」