寺田芽と悠佑は半年以上の付き合いで、性格が合うこともあり、すでに親友同士だった。
今回の帰国では会う予定だったので、藤本悠佑がそう言うと、彼女はすぐに同意した。
藤本悠佑は急いで聞いた。「どの部屋にいるの?」
寺田芽が部屋番号を言おうとしたとき、突然何かを思い出したように口を開いた。「今夜はダメ。ママが寝ちゃったから、明日にしよう」
悠佑は突然笑い出した。「ボス、みんなが言うには、あなたはボイスチェンジャーを使って、ロリ声になったけど、実際はキモいおじさんだって。男なの?女なの?教えてよ」
寺田芽は口を広げて笑った。「秘密だよ〜」
A市の気候は、空気中の湿度がちょうどよく、冬は暖かく夏は涼しい。ホテルのカーテンを閉めると、部屋の中は真っ暗で、寝るのにとても適している。
日が真上に差し掛かる頃、寺田凛奈はゆっくりと目を開けた。時計を見ると、すでに午後1時過ぎだった。寺田芽と秋田さんはすでに昼食を済ませていたので、彼女はデリバリーを注文することにした。
その時、ホテルの入り口で。
寺田佐理菜は複雑な表情を浮かべていた。彼女は臼井真広が急ぎ足でロビーに入っていくのを目の当たりにし、拳を強く握りしめた。
ここ数日、臼井真広に電話をかけても、相手はいつもそっけなく、毎回夢葉製薬会社のことばかり聞いてきた。
女性の第六感が告げる。何かがあるに違いない。
だから、今日の朝早くから臼井真広を尾行していたのだが、まさかここに来るとは思わなかった。
一流ホテルはA市で最も高級で最も高価な場所の一つだった。
寺田佐理菜はこっそりと中に入り、臼井真広が1階のバーに入っていくのを見た。
彼は現金の束を取り出し、数人のウェイターに渡しながら、小声で指示した。「……ちゃんと覚えておけよ。今夜は俺の目配せを見て行動するんだ!」
「はい、臼井さん」
数人が散開した後、臼井真広は緊張した様子で深呼吸をし、そしてメッセージを打ち始めた:
【渡辺さん、失礼をお許しください。あなたの番号は1階のフロントで教えてもらいました。今夜8時に、下階のバーでお話しさせていただけませんか】
メッセージを送った後、彼は満足げに目の前の装飾を見上げた。