第26章 頭の単純な生物

「……」

一人は大きく一人は小さく、一人は背が高く一人は背が低く、二人は2、3秒ほど見つめ合った後、寺田芽はびっくりして、思わず扉を閉めようとした。

お兄ちゃんが言っていたわ、パパとママが恋に落ちる前に、私たちは正体を明かしてはいけないの。そうしないと養育権争いが始まっちゃうんだから!

しかし男性は手を伸ばして扉を押さえ、驚いて言った。「建吾、どうしてここにいるんだ?」

寺田芽:「!!」

藤本凜人の顔に暗雲が立ち込めた。

彼はかがんで、寺田芽を抱き上げ、命令した。「一緒に上の階に行くぞ!」

上の階に行ってお兄ちゃんに会ったら、パパに見つかっちゃう!

寺田芽は暴れながら叫んだ。「離して!ママ、助けて!……」

秋田さんが物音を聞いて台所から飛び出してきたときには、藤本凜人が子供を抱えてエレベーターに入る後ろ姿しか見えなかった。