追いかけてきた藤本悠佑はこの状況を見て、思わず額に手を当てた。
やってしまった。
小さな暴れん坊と暴君が、またしても火花を散らしていた。
建吾は頑固で、意地っ張りな性格だ。
しかし、兄は支配力が強い。建吾が普段おとなしくしていれば問題ないが、一度でも言うことを聞かなければ、家の中は大騒ぎ――まさに大嵐と雷鳴が轟くカオス状態になるのだった。
彼は本家に電話をかけて、甥を救出してもらおうと考えていたが、突然暴君が足を止め、表情に驚きの色が浮かんだのを見た。
首筋に感じた数滴の熱い液体に、藤本凜人は全身が凍りついたようになった。
まさか、これは……
彼が腕の力を少し緩めると、涙に濡れた小さな顔と目が合った。
寺田芽は今、激しく泣いていて、小さな体を震わせながら、小さな手で藤本凜人の顔に触れた。「パパ、パパなんだね……」