追いかけてきた藤本悠佑はこの状況を見て、思わず額に手を当てた。
やってしまった。
小さな暴れん坊と暴君が、またしても火花を散らしていた。
建吾は頑固で、意地っ張りな性格だ。
しかし、兄は支配力が強い。建吾が普段おとなしくしていれば問題ないが、一度でも言うことを聞かなければ、家の中は大騒ぎ――まさに大嵐と雷鳴が轟くカオス状態になるのだった。
彼は本家に電話をかけて、甥を救出してもらおうと考えていたが、突然暴君が足を止め、表情に驚きの色が浮かんだのを見た。
首筋に感じた数滴の熱い液体に、藤本凜人は全身が凍りついたようになった。
まさか、これは……
彼が腕の力を少し緩めると、涙に濡れた小さな顔と目が合った。
寺田芽は今、激しく泣いていて、小さな体を震わせながら、小さな手で藤本凜人の顔に触れた。「パパ、パパなんだね……」
藤本凜人:「……」
普段はいつも表情を固くしている息子の顔が、今はとても生き生きとしていた。ブドウのような黒い瞳からは、大粒の涙が次々とこぼれ落ちていた。
人に対して特に――途方に暮れさせるような感覚を与えていた。
「泣くな」
藤本凜人はかすれた声でそう言うと、少し不器用に手を伸ばして涙を拭こうとしたが、その指が柔らかい小さな手に握られた。「パパ!」
彼女はついにパパを手に入れたのだ。
もう桃から飛び出してきた子供ではなくなった。
寺田芽は活発で外向的だが、他の子が皆パパに高く持ち上げてもらうのを見るたびに、やはりとてもうらやましく感じていた。
彼女の柔らかな声に、藤本凜人は次に言おうとしていた「男は涙を見せないものだ」という言葉を飲み込んでしまった。
建吾はまだ5歳で、まだ子供なのだ。
いつも鋼のように硬かった心が、ほんの少しだけ緩んだ気がした。
藤本凜人は顔を引き締めたまま、叱るように言った。
「食い意地のために泣いたり喚いたりするなんて、情けない」
そう言いながらも、前代未聞のことに寺田芽を下ろした。
寺田芽は彼の大きな手をぎゅっと握りしめた。まるで、捕まえた魚が逃げてしまうのを恐れるかのように。小さな顔を上げて、にっこりと言った「パパ、一緒にご飯食べよ!」