寺田健亮が眉をひそめたが、まだ何も言わないうちに、優しくも焦った声が聞こえてきた。「お兄さん、私を死なせる気?」
病床の上で、穏やかな中年女性が病院着を着て、ベッドから降りようともがいていた。彼女の髪の毛は全て剃られており、病気で痩せてしまい少し形相が変わっていた。頬はこけていたが、それでも彼女の優しさは消えていなかった。
彼女は寺田凛奈の叔母、寺田輝星(てらだ こうせい)だった。
寺田凛奈は急いで二、三歩進み、ベッドの端に座って彼女の手を握り、「叔母さん」と呼んだ。
寺田輝星は寺田凛奈をじっと見つめ、そして目に涙を浮かべた。「凛奈、痩せた姿が本当にお母さんに似ているわ」
彼女は震える声で続けた。「こんなに長い間、海外で苦労したのね」
海外での5年間、寺田さんは彼女に1円も渡さなかったが、叔母はいつも生活費を送ってくれていた。