一流ホテルは管理が厳しく、エレベーターもカードをスキャンする必要があった。
寺田芽の部屋は最上階ではなかったが、カードをスキャンしてもエレベーターのボタンを押すことができなかった。
彼女は不機嫌そうに口をとがらせ、少し考えてから、まず38階の自分の階に戻り、そこから階段を使うことにした。
しかし、エレベーターを出るとすぐに寺田凛奈に出くわした。
寺田芽は瞬時に湧き上がる小さな思いつきを押し殺した。
お父さんは明日でも会えるけど、ママは明らかに気分が落ち込んでいて、彼女を必要としているように見えた!
寺田凛奈は数人の私立探偵に電話をかたが、当時の手がかりは全く見つからなった。結局のところ、寺田佐理菜さえも息子の行方を知らないのであれば、真相は寺田さんだけが知っているのかもしれない。
しかし、寺田さんと条件交渉をするのは...彼は寺田佐理菜のように頭が単純で四肢が発達しているわけではない。
そう考えていると、小さな体が飛びついてきて、彼女の足を抱きしめた。「ママ、大好き〜」
寺田凛奈は思考を中断され、彼女の頭を撫でながら低い声で尋ねた。「秋田さんとどこで遊んできたの?」
寺田芽は指をいじりながら、嘘をつく時は目を合わせられずに言った。「ホテル内をちょっと歩いただけよ。でも、どこも面白くなかったの。ママ、一緒に寝よう〜」
寺田凛奈は「うん」と答え、ドアを開けた。
振り返ると、寺田芽が壁にもたれかかり、かっこいいポーズを取っていた。「ママ、もしお兄ちゃんが恋しくなったら、私を見てね。お兄ちゃんはきっと私みたいな感じだよ。だって、私たちは一卵性双生児だもん!」
寺田凛奈は小さく笑った。「一卵性双生児は異卵性双生児のことよ。普通の兄妹と同じで、全く同じ顔をしているのは珍しいの」
寺田芽は失望して小さな頭を垂れた。「そうなんだ。お兄ちゃんが私と同じだと思ってたのに〜」
寺田凛奈は笑いながら、彼女を部屋に連れて入った。
二人がシャワーを浴びてベッドに横たわると、寺田凛奈の携帯が鳴った。寺田家からだった。彼女は少し考えてから、思い切って電源を切り、芽を抱きしめて気持ちよく眠った。
翌朝目覚めると、芽はすでにこっそり起きて、外で秋田さんと遊んでいた。