第13章 芽がパパを探す

「あの子のことは父が処理したの。父は私に何も言わなかったから、私は知らないの……」

寺田佐理菜は泣きながら話していたので言葉が不明瞭で、離れた場所にいる人には聞き取れなかった。

寺田凛奈は眉をしかめ、それを見た寺田佐理菜は怖くなって口を開いた。「本当に知らないんです!誓います、もし知っていたら、顔にあばたができるようにしてください!うううう……」

彼女は小さい頃から美しさを大切にしていたので、このような誓いを立てるということは、本当に知らないということだった。

寺田凛奈は失望の色を隠せなかった。

彼女はこれ以上時間を無駄にしたくなかったので、立ち上がってゆっくりと外に向かった。

藤本凜人の横を通り過ぎる時、寺田凛奈は先ほど手を出してしまったことで藤本凜人の面子を潰してしまったことを思い出した。

彼女は少し説明しようと思い、藤本凜人の方を見た。

男性も彼女を見ていて、その視線は深く、心中を測り難いものだった。

寺田凛奈は少し考えて言葉を整理し、口を開こうとしたが、思わずあくびをしてしまった。

藤本凜人:「……」

傍にいた倉田健祐は怒り心頭だった。この女は人を殴っただけでなく、今度は尊大に藤本社長の前であくびをする。挑発のつもりか?

そう思った瞬間、女性が無表情で口を開いた。「藤本さん、決して挑発するつもりはありません」

倉田健祐は口角を引きつらせた。そんな言葉、馬鹿じゃなければ信じないよ!

皮肉を言おうとしたその時、自分の上司が冷たく答えた。「……ああ」

倉田健祐:「??」

説明を終えた寺田凛奈はゆっくりと彼の前を通り過ぎていった。

藤本凜人は彼女の背中を見つめ、目を細めた。

先ほど女性が手を出した時の動きは素早く的確で、躊躇がなく、野性的で大胆だった。

しかし彼女は欲しいものを手に入れられなかったようで、全体的に落胆している様子で、元気のない姿を見ていると、彼女を助けたいという気持ちが湧いてきた。

そう思った瞬間、後ろで倉田健祐が愚痴を言うのが聞こえた。「社長、よかったですね。喧嘩や殴り合いを禁止していて。寺田さんのあの腕前なら、この金持ちお坊ちゃんたちは全員やられていたかもしれません」

「……」