二人は時間と場所を決めた。
電話を切る頃には、寺田芽が走ってきた。彼女は大きな目をぱっちりと開いて言った。「ママ、明日本当に私をパパと一緒に食事に連れて行くの?」
寺田凛奈は彼女の頭を撫でながら、淡々とした口調で言った。「あなたはまだ学校に行かなきゃいけないのよ。何の食事?」
「……」寺田芽の頭がしょんぼりと下がった。「やっぱり!」
寺田凛奈の目に悪戯っぽい光が走った。
藤本幸大は毎週火曜日と金曜日に瀬戸門に授業を受けに行き、それ以外の日は家で勉強している。彼女は息子に会っていない日が3日も経っていた。
翌日、寺田凛奈は芽を幼稚園に送った。
車はいつものように路側に停まり、彼女は寺田芽の手を引いて門まで送り、そこには既に先生が待っていた。
寺田芽は幼稚園特製の制服を着て、大きなリュックを背負っていた。小さな体がとてもかわいらしかった。