第73章 こんにちは、寺田さん

幼稚園を出てから、渡辺光祐は沈黙状態に入っていた。

面接すらないなんて、理解できなかった。

富樫佑咲が話し始めたとき、彼は眉をひそめ、杏色の瞳を少し伏せ、長い睫毛が目の中の冷たさを隠していた。

何か言おうとしたとき、寺田芽のあの甘い声が聞こえ、渡辺光祐の唇の端がすぐに上がった。

特に富樫佑咲の顔に浮かんでいた得意げな笑みが凍りついたのを見て、彼はさらに心の中で快感を覚えた。

彼女が質問するのを見て、渡辺光祐は美しい眉を少し上げて言った。「私たちには面接試験はありませんでした」

「ないの？」富樫佑咲はすぐに反応し、口を開いた。「他の人の推薦状が良くなかったからでしょう？そうよね、渡辺家にも枠がないのに、あなたのいとこがどこから推薦状をもらえるっていうの？」

彼女は体を向け、バッグから一枚の紙を取り出し、片手で石丸和久に渡した。「ほら、これが石丸家の推薦状よ。明日また面接に行けばいいわ」