第45章 見逃せない!

寺田凛奈が目を覚ますと、芽は既にそばにいなかった。おそらく下の階で遊んでいるのだろう。

彼女は起き上がってからこのスイートルームを見回した。市内の寺田家の寝室の2倍ほどの広さで、白とグレーを基調としたインテリアデザインだった。母親が強い人物だったことが垣間見える。

洗面を済ませてから、スイートルームに付属の書斎に入ると、そこはとてもきれいに掃除されていて、細部に渡辺家の心遣いが見てとれた。

寺田凛奈は何気なく一冊の本を手に取った。

――生物科学に関する専門書。

製薬業界に深く関わる内容だった。

それを見た瞬間、彼女は納得した。

――だからこそ、母は「夢葉製薬会社」を立ち上げたのか。

コンコン――

突然、部屋の扉が軽く叩かれた。

寺田凛奈が扉を開けると、焦った様子の石丸和久が立っていた。