藤本凜人の切れ長の瞳に疑問の色が浮かんだ。彼女はなぜ上がってきて息子のことを尋ねるのだろうか?
彼は表情を変えず、さりげなく答えた。「先に帰りました。どうかしましたか?」
手術は6時間続き、今は深夜1時を過ぎていた。建吾は元々頑張るつもりだったが、やはり年齢が小さいので耐えられなかった。
藤本凜人は人を遣わして先に彼を家に送り返した。
帰ったの?
寺田凛奈はすぐに興味を失い、視線を戻すと、また例のだらしない様子に戻った。「何でもありませんわ。あなたはなぜ帰らないんですか?」
藤本凜人はゆっくりと体を起こし、静かに彼女を見つめた。
その視線は、まるで彼女だけを捉えようとするかのように深く、揺るぎないものだった。
灯りに照らされた泣きぼくろは、より一層の妖艶さを帯びる。