渡辺由佳は矢継ぎ早に質問を投げかけてきた。この田舎から来た姪に一矢報いてやろうという魂胆だった。
寺田凛奈はアーモンド形の瞳を伏せ、表情を冷ややかにしたまま、何も言わなかった。
石丸和久は慌てて取り繕った。「お姉さん、凛奈は芽を連れて海外で育ったから、向こうではゆとり教育を重視していて……」
渡辺由佳はソファに寄りかかり、上司が部下に命令するかのように口を開いた。「ゆとり教育なんてものは人をだますためのものよ。海外のそういうのは格差を広げるためのもの。本当の貴族や名家は、子供の頃から厳しく教育するものなのよ!」
彼女は鋭い目つきで寺田凛奈を見た。「あなたは寺田凛奈っていうのね?もうそんなに大きくなって、一番良い学習の時期とチャンスを逃してしまったわね。でも安心して、渡辺家に身を寄せたからには、姉さんの顔を立てて、あなたを路頭に迷わせたりはしないわ。未婚のまま妊娠して、婚約者に破談されたんですって?心配しなくていいわ、いい家を見つけてあげるから、一生心配なく暮らせるようにしてあげる。あなたの娘は……」
彼女は藤本建吾を見て、この子を品定めするように眺めてから、施しを与えるかのように口を開いた。「5歳で他の子と比べれば出遅れてはいるけど、まだ救いようはあるわね」
寺田凛奈はアーモンド形の瞳を伏せたまま、冷たい眼差しで、唇の端に嘲笑を浮かべて言った。「心配無用よ。私の子供は、私自身がしつけます」
寺田芽の教育問題は確かに頭の痛い問題だった。娘は超高い知能を持っているが、ゲームにしか興味がなく、勉強はいい加減で、特に和歌は叔母に教わったせいでめちゃくちゃになっていた……
しかし、だからといって他人が芽にあれこれ指図できるわけではない。
「あなたが教育する?」
渡辺由佳は冷たく言った。「何を教えるっていうの?毎日スマホをいじってゲームをして、大きくなったらあなたみたいに私生活が乱れて未婚で妊娠するの?」
「黙りなさい!」渡辺大奥様が叱責すると、渡辺由佳は口をとがらせた。
石丸和久はさらに眉をひそめた。「お姉さん、あなたの気持ちはわかるけど、もう少し人の気持ちを考えて話せないの?」