第103章 パパへの誕生日プレゼントを用意する

寺田芽は黒ぶどうのような大きな目をぱちくりとさせ、「ママ、変装する必要はある?」と尋ねた。

  その言葉を聞いて、寺田凛奈は少し黙り込んだ。

  本来は彼女にメイクをして、誰にも分からないようにするつもりだった。

  でも昨日一緒に食事をした時、彼が自分の飲み物を飲んで顔を赤らめた様子を思い出すと、藤本凜人もそれほど怖い人ではないのかもしれない……

  それに、昨晩のあの不安な感覚は、一体どこから危険が来ているのか知りたくなった。母が亡くなる前に、なぜあんな言葉を残したのだろうか?

  彼女にはぼんやりと、当時自分が未婚で妊娠したことも、母の事情と関係があるような気がしていた。

  なぜなら、後で調べてみたが、彼女の記憶の中では、藤本凜人と接触したことは一度もなく、どうやって妊娠したのかも謎だった。

  実際、このように隠し続けることに意味はない。

  むしろ正直に話した方がいい。藤本凜人が建吾の「実母」をそれほど憎む理由、その中にはきっと何か誤解があるはずだ。

  彼女は正々堂々と生きてきた。何か問題があれば説明すればいいだけだ。

  そう考えて、寺田凛奈は口を開いた。「……必要ないわ」

  寺田芽の目が輝いた。「本当?」

  「本当よ」

  「やったー!」

  寺田芽は携帯を手に取り、「お兄ちゃんに教えてくるね。私たち4人家族、再会できるんだ~」

  小さな子供がそわそわと走り去ろうとするのを見て、寺田凛奈は突然声をかけた。「パパの誕生日プレゼント、用意した?」

  寺田芽は足を止め、振り返った。「子供が大人にプレゼントを用意するの?」

  寺田凛奈:?

  誰が自分はもう3歳の子供じゃないって言ってたっけ?

  そう考えていると、寺田芽が笑顔を見せた。「ママ、安心して。もう準備できてるよ!下書きも済ませたし、パパをめっちゃ褒めちゃうんだから!」

  「……」

  つまり、あなたの誕生日プレゼントはまた一連のお世辞ってこと?

  いいわ、公平ね!

  寺田凛奈は彼女を無視して、階段を降りながら言った。「服を着替えて。私は下で待ってるわ」

  「了解!」

  今日は土曜日で、学校はない。