石丸慧佳は首を伸ばし、入口の方を見ると、すでに大勢の人が押し寄せていた。
彼女はダンスを踊り終えたばかりの渡辺光春と寺田凛奈を一瞥し、瞳に傲慢さと得意げな表情が浮かんだ。ドレスを整えながら、目を伏せて言った。「木田柚凪先生にご挨拶してきます」
武井俊樹はそれを聞いて目を輝かせた。「じゃあ僕も…」
「一緒に行こう」という言葉を言い終える前に、石丸慧佳に遮られた。「あそこで木田柚凪を囲んでいるのは皆お金持ちのお嬢様たちよ。あなたが行って何になるの?待っていなさい。どうせ木田柚凪は私の家に来て授業をするんだから、その時に会えるでしょ?」
そう言い終えると、彼女は振り向いて去った。
石丸慧佳の話し方は尊大で、声も小さくなかったため、近くで踊っていた数人にも聞こえてしまった。彼らは武井俊樹をニヤニヤしながら見た。