第170章 報い

石丸真央は鉄青な顔をして入ってきた。

  富樫佑咲は彼を見て、慌てて石丸慧佳と目を合わせ、二人とも口を閉じた。富樫佑咲は立ち上がり、笑顔で一歩前に出た。「あなた、今日はどうして早く帰ってきたの?」

  そう言いながら、彼女は無意識に石丸真央の手にあるバッグを受け取ろうとしたが、バッグに手を当てても、石丸真央が手を放さないことに気づいた。

  富樫佑咲は戸惑い、不思議そうに「あなた?」と呼びかけた。

  その言葉が出たとたん、石丸真央は突然手を伸ばし、「パン!」と激しく平手打ちを下した。富樫佑咲の頭が横に向き、目が星を見るようだった。

  彼女は完全に呆然としていた。

  石丸家は昔から学者の家系で、口で解決できることは決して手を出さない。石丸真央はさらに紳士中の紳士で、これまで彼女に大声で話したこともなく、まして手を上げたこともなかった!