臼井陽一は笑って首を振った。「分かりません。」
寺田凛奈は「ああ」と声を出し、気にしなかった。
臼井陽一は不思議そうに尋ねた。「知りたくないの?」
寺田凛奈はそっけなく口を開いた。「どうでもいいです。」
彼女は本当にどうでもよかった。
幼い頃からそんな家庭で育ったので、彼女にとって家族愛はあってもなくてもよかった。
母親は彼女にとって、最大の価値は彼女を産んだこと、そして学ぶべき多くの資料を残してくれたことだった。
父親……
この言葉は幼い頃から寺田健亮のことだったが、今は彼ではなくなり、それほど感情もなかった。
寺田凛奈はボイスレコーダーをポケットにしまい、改めて臼井陽一を見た。「ありがとうございます。」
「どういたしまして。」臼井陽一はため息をついた。「当時、あなたの母親が私たちの家族にあなたの世話を頼んだんです。考えてみれば、臼井家の失態でもあります。」