黒いSUVは大きくて威圧的で、そこに停まっていて目立っていた。
しかし、もっと目立っていたのは、車に無造作にもたれて、スマートフォンを見下ろしている人物だった。
寺田凛奈は全身黒い服を着て、だらしなくそこにもたれながら、海外の仕事に忙しく、自分がすでに美しい風景の一部になっていることにまったく気づいていなかった。
行き交う学生たちや、大学の門を通り過ぎる通行人たちは、みな彼女に目を留めていた。
真っ白な肌、すらりとしたくびれのある体型は、思わず振り返らせるほどだった。
小泉佐友理は彼女を見て、少し驚いた様子で言った。「凛奈姉さん?」
彼女の声を聞いて、寺田凛奈はようやくだるそうに顔を上げた。まず彼女の赤く腫れた目に目が留まり、ゆっくりとスマートフォンの文字を打ち終えて送信し、それからようやくためらいがちに尋ねた。「どうしたの?」